地方都市の進学高。そこには代々の生徒により伝えられてきた 『サヨコ』 という儀式があった。前任者によりその年の 『サヨコ』 に任命された生徒は、代々秘密の鍵とある儀式を次の学年に伝える役割を担う。決して途切れることなく伝えられてきた儀式。誰が何のために始めたのか?そして今年のサヨコは一体誰なのか?高校時代という誰もが通ってきた、学校という特殊な環境におけるノスタルジーを描いた作品。
ミステリーの旗手、恩田陸のデビュー作です。
とは言っても恩田陸は初めて読みました。タイトルも設定もすごく興味を惹かれるもので素晴しいのですが、肝心のオチがちょっと…。恩田氏自らもあとがきで、ファンタジーノベル大賞候補作として選ばれた際かなり叩かれた、と書いていますが、確かにファンタジーという分類で見ると叩かれるのは仕方ないかもしれません。結論としてファンタジーになっていないからです。
でもあらすじを自分で書いてみて思ったのですが(あらすじをよそからコピーすることもありますが大体私が考えて書いております)、儀式としての
『サヨコ』 の実体はノスタルジーそのものであった、いうことを作者は言いたかったのだと思うのです。
『サヨコ』 の儀式と存在に怯え翻弄されるそれぞれの高校生を描くことで、高校生とは大人に成りきれていない存在、子どもと大人の中間的存在と表現することが作者の意図だったのでしょう。
読了直後はどうせなら思いっきりファンタジーとして書けば良かったのに、と思いましたがこうして時間が経ってみるとあの結末でも良かったのかもしれないな、という気がしてきました。ただ途中仕掛けが破綻しているところがいくつかあるのでそれはちょっと見苦しいかなと。恩田作品でオススメがありましたらぜひ教えてください。
(おまけ) 恩田陸と宮部みゆきって似ていると思う。どうでしょ?
評価:



(5つ満点)
PR