物心ついた時、少女はここで暮らしていた。アイヌ語で 『地のはて』 を意味するというこの土地で。厳しい冬を生き抜き少女は成長する。小樽での奉公を終え知床に帰った少女はかつて家族を救ってくれたアイヌの青年に恋をするが、それは一度きりのかなわぬ恋だった。北海道知床で生きた女性の生涯を丹念に描いた書き下ろし長編。
(乃南アサ)1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『涙』 『鍵』 『しゃぼん玉』 など。
311震災がありました。その後丸2日間停電となりました。3月はまだ寒いです。その停電の中、本作を読みふけりました。何もよりによってこんな寒い時に極寒の北海道の開拓の話を読まなくても…と自分でも思いつつ、読了しました。
乃南アサ、変わらず骨太です。渾身作です。こういう物語を読むと、自分の日々の悩みが本当に贅沢な環境における贅沢な悩みなのだと、つくづく感じてしまいます。大正から昭和の時代、戦争へと突き進む時代は本当に辛い時代でした。北海道開拓の人々にとってもその地で昔から暮らすアイヌの人々にとっても。
読み終わり、知床の地を思うと、何とも言えない切なさがつのります。
評価:





(本を愛する全ての方に)
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