食べ物こそ中国の成長の秘密。中国東北部の食文化をカラー写真で一挙公開。楊逸が子ども時代を振り返り母国の食文化を通して文化や人々を縦横無尽に語る。東京新聞連載を大幅に加筆修正し単行本化。
(楊逸)ヤン・イー。1964年中国ハルビン市生まれ。お茶の水女子大学卒業。在日中国人向けの新聞社勤務を経て中国語教師。『ワンちゃん』 で文學界新人賞、『時の滲む朝』で芥川賞受賞。著書に 『金魚生活』 『すき・やき』 。
中国三千年の食の歴史、楽しいことばかりの本かと思いきや、全然違いました。教師の家に生まれたために幼い頃一家揃って文化大革命の
『下放(シャオファン)』 の対象となり、厳しい農村での農作業の暮らしに従事したこと。春節の1ヶ月のために残りの一年間、ひらすらにただ働く生き方、などなど当時の中国の人々の厳しい暮らしがありありと迫ってきます。
楊氏は60年代生まれ。69年生まれの夫とほぼ同じ世代だというのにこんなに子どもの頃、食という人間の基本的な生活の部分で苦労されていたとは…。そして大多数の中国の人が、その苦労が当たり前であったとは。本当に世界は広く、私は知らないことが多すぎます。
厳しい下放の日々。3年経ちようやく下放から解放され戻るも、かつての家は既に他の人に取られ、学校の片隅に宿を取り暮らす日々。そこでもいつもお腹を空かせていた楊氏が思い出すのは、食べ物のことばかり。その日々の中で近所に暮らしていた回族(ウイグル族)の人々や朝鮮族の人々の話など、興味深く読みました。
改めて楊氏の日本語、かなりこなれてきたのを感じました。小説の新刊も楽しみにしています。
評価:




(5つ満点)
PR