小笠原諸島の架空の孤島。警察の駐在所すらない平穏なこの島に、治安維持のための 『保安官』 として赴任した元刑事・高州。のんびりと退職後を過ごすつもりが、島の持つ重大な『秘密』の存在を知り、そのために次々と起こる殺人事件に巻き込まれてゆく。島民とわずかな観光客のみの島で繰り返される殺人事件、真犯人の正体と目的は。東京中日スポーツ連載 『海と拳銃』 を改題し大幅に加筆訂正して単行本化。
主人公が一人称(私や俺)の小説は読みにくい、というのが勝手な私の意見でしたが、これは主人公 高州の一人称 『私』 で物語が進んでいきますが特に読みにくいということはなかったです。
物語は架空の島である青国島を舞台に繰り広げられます。観光以外に産業もほとんどない平穏な小さな島に、突如殺人事件が次々と起こる。それと同時にその引き金となった島の莫大な財産を巡る人々の争いが描かれています。島の設定はアメリカからの本土返還が遅れたために帰島者や新規の入植者が少ない上、観光と漁業の他に産業もなく治安も安定している、という理由で 『警察の駐在所すらない』 という地。警察OBの高州は警察時代の激務と離婚で疲弊した精神と身体を休めるために、この島の治安維持官 『保安官』 のアルバイトに就く。軽い気持ちで赴任したが次々と事件が起こり…という展開。
評価:




(5つ満点)
狭い島で住民の全てが顔見知り、という状況でなぜ殺人事件が次々と起こるのか。誰が味方で誰が敵なのか。孤立無援の高州は果たして犯人に迫ることができるのか。
いつもながら主人公は冴えまくりでタフガイ、という完璧な人物ですが、狭い島の中にいるからかえって見えない真実に、外部の人間である元妻警察キャリアの助言で迫ることができた、という仕掛けはやや出来過ぎ感を感じなくもないですが、まぁいいかな。警察の情報網がなければ確かにそこまでは絶対分からないでしょ。という内容ですし。
『保安官』 という名称や狭い島独特の暮らしぶりの設定は興味深いです。こういう細かい設定がきちんとしているから大沢作品は面白い。真犯人に迫っていくくだりも楽しめます。
それにしても元妻はやっぱり 『やたら美貌』 『警察キャリア』 という設定だけは崩せないのでしょうか、大沢先生!
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