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失われた町*三崎亜記

usinaware.jpg近未来と思われるとある国。その国では原因不明の現象が30年に一度必ず起こっていた。それまで普通に生活の営みを続けていた町の人々が、ある日忽然と姿を消してしまうのだ。人々が 『失われる』 原因は誰にも分からず、予知もできない。ただ残された町の痕跡を消すことだけがその 『消失』 の広がりを抑えるのだと信じられている。ある日突然愛する人を失い、喪失感を抱えそれでも日々続く 『日常』 を生きて行かねばならない残された人々の悲哀、憤り、そして願いとは。異世界とも言える近未来を舞台に描いた新しいSF小説。『小説すばる』 掲載に加筆修正し単行本化。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。2005年『となり町戦争』第17回小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。本作は第136回直木賞候補作(受賞作なし)。その他作品に短編集 『バスジャック』。


三崎亜記。 『となり町戦争』 からぶっちぎり、 『バスジャック』 では表題作はイマイチだったものの、他の短編に光るものが多く、異常なまでに期待されていた初めての長編作。つまりはその期待が大きすぎたのでしょうか?正直、読了感は 『違った…』 でございました。

読みながら、だんだんこれは瀬名秀明 『八月の博物館』 的展開だな、と思ってしまいました。作者の意図が読者には伝わりにくい。厳しい言い方をすると、作者の独りよがり的な所が多く見え隠れしてしまう。設定がかなりいいだけに、この読了感の悲しさは何か。

まず 『30年に一度、この国ではそれまで普通に生活を続けていた人々が、町単位で忽然と姿を消してしまう』 という事実。そのサイクルは確実に30年に一度、誰にも予知できず、町の住民達は誰一人直前まで騒ぎ立てることなく、不思議に人だけがいなくなる。食卓は食事が用意されたまま、貴重品は残されたまま、人だけがいない町が残る。

この不可思議な現象を追求し、次回の 『消滅』 を食い止めようとするのが管理局と呼ばれる組織。国の団体らしいけど。そしてこの管理局で奮闘する人々を中心に物語が紡がれるのだが…。

評価:(←辛口。次回作に期待!!!)

まず、群像劇は難しい、ということは一つ挙げられると思う。さすがの脅威の新人、三崎氏にも群像劇はまだ早すぎたのかもしれない。でもそれよりも、せっかく思いついた 『町単位の消滅』 という不可思議現象を彼自身がどう捉えていたのか。最初私は 『消滅』 自体がウィルスのようなもので、その活動が30年サイクルで行われるのだと思っていました。
がっ途中から物語の様相が変わってきます。

『町』 にはそれ自身の自我のような 『意識』 がある。町が消滅するのは町の意志による、という考え方。その意志に抗い、町にいながらも消滅を免れた人を 『消滅耐性』 と呼び、管理局は徹底してその原因を探り、次の消滅の予知に利用しようとする。うーんやっぱり耐性ならウィルスじゃないの?町が意識を持つ?その時点でちょっと…うーん。

ネタバレ寸前ですが、町の意志によって 『消滅する人』『その時点で町外におり消滅を免れる人』 が分けられるそうです。その意味は一体何?では消滅耐性を持った人の位置付けはどうなるの?町にとってその人は敵になるの?ウィルスならばウィルスとして最後まで扱うべきではなかったのでしょうか。途中から 『町』 には意識がある、人の悲しみに反応してその消滅範囲を広げる、などどこからどこまでが(物語上の)真実なのか…。

もちろんそれが分からないから管理局があり、かつて町の犠牲になった人々がそこで奮闘する訳ですが、途中あまりにも色々な事象が絡みすぎて、ややこしくなりすぎ。ちなみに 『居留地』 の辺りの記述、桂子と脇坂の結婚の辺りの記述は必要なのか?とまで思ってしまった。

最後までひびきちゃんとひびきくんの2人のお母さんの本名が出てこないのが、何だか仲間外れみたいで可哀想だった。どうして彼女達の名前だけ出てこなかったのだろう?というか私見落としているのか?だったりして。

高い評価を得ている反面、逆に 『となり町戦争』 の方が小説としては完成されていたという評価もあるそうで、私も実は同意見です。 『町』 の描き方が不十分だと私は感じました。遺された人々が失われた人々の遺志を継ぎ未来を築いて行く、というテーマはよく分かりますが、物語の核心が中途半端ではそのテーマは伝わりにくい。

せっかくすごーくいい舞台設定なのに!残念です。

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Comment

ただ今 読破中

  • 小琴
  • 2007-05-07 09:27
  • edit
「グロテスク」をやっと読み終え、
(主人から “珍しく時間かかってるじゃん”って言われるほど、
なかなか読み進みませんでした。
図書館で 2サイクル借りました。)



ただ今 こちらを読んでいます。
お話の終結を早く知りたくて
ペースは やや早め。


でも、こちらも
決して軽いお話ではないので

同時に
“やかまし村の~”も
読んでます。


進まない読書

  • AKM
  • 2007-05-07 21:30
  • edit
分かります、グロテスク辛かったでしょう。
私もキツかったです。
だからこそ、あそこまで書ける桐野氏には
脱帽です。

この記事かなりネタバレですみません
でも三崎亜記は間違いなく素晴らしい作家だと思います、
『となり町戦争』 『バスジャック』もぜひ。
私は今日届いたダ・ヴィンチ6月号に載っている
三崎亜記の読切短編を今から読むのが
楽しみです

リンドグレーンいいですよね、
私は 『長靴下のピッピ』 シリーズが好きです。
私も児童文学を同時並行して読みたいと思っているのですが
2冊同時に読み進めるのが苦手です

『魔女の宅急便5』 が発売されたそうなので
早く1~4巻読まなきゃなのに…。
『児童文学週間』 を銘打って2週間位やりますかね?

となり町~

  • 小琴
  • 2007-06-02 09:52
  • edit
“失われた町”を 図書館に返却。

丁度 そのとき
目に留まった
“となり町戦争”を借りてきました。

こちらも 先を読ませるストーリーで、
手元においていたのは
わずかの日数。


どちらも
不思議な空気の現実感。

単純な私は
“となり町~”の方が
登場人物が少なくて
わかりやすかった(笑)


yom yom3  今月発売  待ち遠しい。



ただ今は
今まで 手にしたことない
谷村志穂を 読んでます。


梨木さんの「沼地~」も
恒川さんの「雷~」も
予約しないと(図書館) 読めそうにないわ.....。

新しい作家

  • AKM
  • 2007-06-03 21:22
  • edit
『失われた町』 いかがでした?
私は上記の通りイマイチでしたが…。

『となり町戦争』 の方が良かったと思うのです、
映画化も楽しみです。
小琴さんのお好きな江口洋介が主演ですよ。

yom yom3ももう今月来ちゃいますね~
なんと2号全然読んでないのです…しまった。
また雑誌積読が始まってしまった…。

谷村志穂は 『海猫』 ですか?
映画化された時に私も読もうとしたのですが
まだ未読です。
オススメ教えてくださいね。

私は最近奥田英朗を読んでます、
精神科医Dr.伊良部シリーズです。
『イン・ザ・プール』も良かったですが
直木賞を取った 『空中ブランコ』 はシリーズ2作目ということで
Dr.伊良部のキャラもかなりこなれて来ていて
どの短編も良かったですよ。
今からシリーズ3作目 『町長選挙』 です。

映画化

  • 小琴
  • 2007-06-04 22:53
  • edit
いつ?



映像化されるのか...。


江口っちゃんとは!?

もう少し若手の方を想像してたもんで....。



それにしても
気になるのは




相手方の女優は
誰?





2月に

  • AKM
  • 2007-06-08 07:40
  • edit
ごめんなさい小琴さん、
映画は2月既に公開されてました!
いつ公開かな、と思っていたらうちの方の映画館では
上映されなかった…!
半年後とか遅れてくるのでしょうか…悲しいです。

江口洋介とお相手は原田知世です。
ちょっと…年上過ぎ?そうでもない?
だいぶ遅れてますが上映されるなら観てきますね。
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名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
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