高校2年の麻里子は両親を亡くしてから姉の秀子、兄の俊太郎と3人暮らし。母の死後、自分に冷淡になった兄との関係を麻里子は悩んでいた。その頃世間では奇妙な通り魔事件が頻発、犯人は女子高生のカバンばかりを狙っていた。そして麻里子の親友が麻里子宅から帰る途中にこの通り魔に襲われ。やがて通り魔事件の犯人は殺人死体となって発見されるが、麻里子にはこの一連の事件で兄に相談できずにいる秘密があったのだ。兄弟の確執、麻里子の悩み、そして通り魔事件。それぞれのもつれた糸がほどけていくにつれ複雑な事件の全容が明らかになってくる。
(乃南アサ)のなみあさ。1960年東京都生まれ。早稲田大学中退。広告代理店勤務等を経て作家活動に入る。『幸福な朝食』 で日本推理サスペンス大賞優秀作、『凍える牙』 で直木賞を受賞。主な著書に 『団欒』 『あなた』 など。
乃南氏の場面設定は本当に秀逸、そもそもなぜ 『鍵』 が麻里子のカバンに入っていたのだろう?それぞれの考えと方法で事件を解こうとする兄と妹、その確執は氷解するのだろうか。
途中からやや急展開になり2時間ドラマ的な雰囲気になってしまうが、兄 俊太郎、妹 麻里子、それぞれの心情が丁寧に描かれており、好感が持てる。見事なミステリー仕立て。
評価:(5つ満点)