数千人の人々を乗せて海を漂う団地船、永遠に朝が訪れない町、生態保存された最後のニュータウン。哀しくて滑稽な不可思議世界を写真家とのコラボレーションで表現した連作短編集。白石ちえこ 写真。『小説トリッパー』掲載に書き下ろしを加え単行本化。
(三崎亜記)1970年福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。『となり町戦争』で小説すばる新人賞受賞、第133回直木賞候補作。主な著書に 『失われた町』 『鼓笛隊の襲来』 『廃墟建築士』 。
(収録作品)遊園地の幽霊/海に沈んだ町/団地船/四時八分/彼の影/ペア/橋/巣箱/ニュータウン
記憶の中なのか外なのか。現実か夢か。を描いた 『町』 に関するファンタジー短編集。三崎さんは本当に 『町』 という単位が好きらしい。
団地船
秀逸。団地が船で、しかも憧れの住居なんて。旅に出る(船出する)ところが憧れなんだろうか。老朽化が進んだ団地、確かに軍艦のように見えなくもない。老朽化した軍艦の行き先は、どこに。
ニュータウン
最近はあんまりぶっ飛んだ話は書くのをやめたのかな、と思っていたところへ最後にこちら。いつもの三崎節炸裂。ニュータウンは保護しなくはならない対象として、その住民も保護下におく、という法令の下、住民達を完全監視。これって何かの隠喩。
平穏な時代に読んでもちょっと怖い三崎作品、不安定な時期には余計に考えさせられます。やっぱり三崎亜記は短編の方が巧いかも。
評価:(5つ満点)