
最愛の妻を遊ぶ金欲しさの少年3人に惨殺された桧山。犯人が13歳の少年達であったためにその氏名すら事件当時知ることができず、無念のあまり桧山はテレビ取材で 『犯人を殺してやりたい』 と発言してしまう。少年法改正後にようやく少年達の氏名とその後の 『措置』 を知る桧山。加害者達は 『更正』 の名の下に社会復帰を果たしていた。被害者でありながら何もすることが出来ない悔しさを胸に、4年をかけてようやく娘との平穏な日々を取り返していた桧山だが、突如あの時の犯人達が次々と殺される事件が起こる。警察に嫌疑をかけられるが、殺したのは自分じゃない。しかし殺したいと思っていた犯人達が次々と殺されていく、これは天罰か罠か。少年法と少年による刑事事件の被害者の抱える想いについて言及した衝撃作。 



(5つ満点)理不尽さを抱えながら、それでも桧山には残された娘を育てていかなくてはならないという使命があり、その想いだけで4年間生きてきた。
娘も4歳になり、保育園にはかつて妻の友人でもあった娘の大好きな先生もおり、経営するフランチャイズのコーヒーショップもどうにか軌道に乗っている矢先、事件が起こる。
この辺も上手い。もう〜どこもかしこも上手い。新人じゃないぞこれ。
保育園のみゆき先生や桧山の店のフリーターやアルバイト達、そしてかつて事件を起こした少年3人と言った登場人物の関係描写がまず上手い。
桧山の日常を追っていく形で上手く紹介できている。
また随所に盛り込まれている伏線がすごすぎる。
ネタバレになりますが、妻が惨殺される2ヶ月前に妻名義の通帳から500万円もの大金が引き出されていた件。妻がそれほど貯金をしていたことも知らなかったし、なぜ引き出したのかも妻の母に聞いても心当たりがないという。そのまま4年が経ってしまった。
また娘が大事にしている万華鏡。手作りの作品で大きくなったら娘にと妻が遺していった物だが、世話になっているみゆき先生に贈ろうと探したが見つけることができなかった。恐らくは個人の作家が丁寧に手作りで作っているものだろうとある店で言われた桧山。その万華鏡を見てある人物が呆然としているのを見て不思議に思う桧山。
などなど…表紙も万華鏡ですね。とにかくこの万華鏡は、さほど私は最初気にしていなかっただけに 『ヤラレタ!』の一言でございます。
私も万華鏡好きです…いつかはこの本に出てくるような凝った細工の1点物を手に入れたいですね。
今私のいつも見ている万華鏡は、大好きな雑貨屋さんで買ったものでドイツ製みたいです。たまに万華鏡を覗くと癒されますよ。
最後に、妻の事件の首謀者に桧山は問われます。
『それでも貴方は奥さんを愛しているんですか。』
桧山は答えます。
『今でも愛している。』 と。
愛は、普遍です。
本格派ミステリーが好きな方に大変オススメです。
ただ感想としては、この作家は好きとか嫌いというレベルではなく、もうスゴイとしか言いようがないです。
正しい日本語の文章、章立て、登場人物設定、展開、伏線の張り方、キー(事件、小物)の使い方など、どれを見ても完璧ですね。
宮部みゆきのような大作家に育って欲しい方です。
ゆっくり味わいながら読むはずだったのに一晩で読んじゃいました。翌日はかなり体調辛かったです…できれば一章ずつ読んで、毎回隠された伏線を想像してみてください。その方が5倍も6倍も楽しめます。終章までこんなにビックリさせられた作品は久しぶりです。