近所に住む小学生のすみれの花を摘んで土産に持たせてあげようとするあみ子。15歳で引越しをするまで彼女には父と母、そして不良の兄という家族がいたが、それはもう昔の話。純粋で奔放な少女時代を過ごしてきたあみ子の目には何が映り、何が映ってなかったのか。太宰治賞、三島由紀夫賞受賞。
(今村夏子)1980年広島県生まれ。『あたらしい娘』(『こちらあみ子』 に改題)で太宰治賞、三島由紀夫賞を受賞。
(収録作品)こちらあみ子/ピクニック
頭を殴られた感じ、今年の芥川賞はもらった!と思っていたのに、候補作にもならなかった(2011年7月)。なんてこったい、審査員は何を読んでいるのか?
家族と離れて暮らすあみ子のシーンから始まる構成も見事、なぜあみ子は家族と別れて暮らすようになったのか?物語はあみ子が父母と兄と暮らしていた小学生の頃に戻る。優しかった兄が 『不良』 になる。母がある日突然 『やる気がなくなって』 何もできなくなる。その家族の崩壊の様を、あみ子の視点からずれることなく、見事に描く。
あみ子は、家族にとって、学校という社会にとって、お荷物な存在だったのかもしれない。それでもあみ子は今日も生きる、明日も生きる。すみれの花を摘みながら。これぞ、純文学。
評価:





(装丁も美しい)
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