自然に囲まれた寄宿学校でキャシー、ルース、トミーは幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた。外界と完全に隔絶したこの謎だらけの施設で純粋培養さながらに大切に育てられた3人。彼らは自分たちが背負う過酷な宿命を知らずに恋や友情を育み、儚い青春を懸命に生きていた。帰る家を持たず寄宿舎生活を続けている彼らを待ち受ける、過酷な運命とは。
イギリス在住の作家 カズオ・イシグロ氏原作。イシグロ氏のルーツは日本ですが原作は英語で書かれているそうです。臓器移植法が進んでいたらこういう社会になっていただろう、という物語で、非常によくできていると思います。物語の舞台は子ども達が11歳の1978年、18歳になり寄宿舎を出て
『コテージ』 と呼ばれる施設で共同生活を始める1985年、そして物語の終盤、28歳になった1995年。
『28歳で物語は終盤を迎えている』 のです。
寄宿舎で大事に育てられながらも、帰る家もなく親の顔も知らず、自分達の存在について常に自問自答を続ける子ども達。そしてその用意された答えの、過酷さ。限られた条件の中で、時に根拠のないデマに突き動かされたりしながらも子ども達は精一杯生きようとします。そして迎える
『終了(Complete)』 の時。
Complete…その言葉の恐ろしい意味を、ぜひ映画を観て確認してください。時代設定を近未来ではなくあえて1970年代~にしたのも見事です。高度医療社会への激しい警鐘だと、私は感じました。
評価:




(5つ満点)
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