きりこは 『ぶす』 な女の子。両親にとても可愛がられて育ったため自分がぶすだなんて思ってもみなかった。ある日きりこは体育館の裏で小さな黒猫を見つける。ラムセス2世と名付けられた猫は大変賢い猫で次第に人間の言葉を覚えるようになる。小学5年生の時のある事件がきっかけできりこは引きこもりになるが、ラムセス2世はきりこを励まし続ける。そんなある日きりこは夢で見た女の子を助けるためについに外に出る決心をするのだった。きりこときりこを囲む人々の交流を描いた物語。書き下ろし。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』 『さくら』 『きいろいゾウ』 『うつくしいひと』 など。
真実とは、幸福とは何か。それを探るのが純文学。そしてきりこの猫ラムセス2世の視点で綴られた本作は、それを真正面から捉え、説いています。ネコに人生が語れるのか?語れるんです、まぁ読んでみてください。
母が
『西加奈子の視点は優しい』 と言ってましたが、これだけ登場人物達に愛情を注げるのもスゴイと思います。
『ぶす』 のきりこだけでなくAV女優のちせちゃんにもサエない押谷さんにも子どものまま30をすぎてしまったこうた君にも、きりこのかわいかった/かわいくなかった同級生達にも、みんな平等に愛情が注がれています。きりこの言う
『うちは、容れ物も中身も込みで、うち、なんやな』 に対してラムセス2世は
『それでこそ、わが、きりこだ!』 と絶賛してくれる。120%以上承認してくれるラムセス2世。私もラムセス2世のような猫(存在)が欲しい。
決してスケールの大きい話でなくむしろ小さいけれど、ラムセスの言う
『世界は肉球より丸い』 に大いに納得してしまう、広大な物語。ご一読ください。
評価:




(5つ満点)
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