吉本ばななと奈良美智の交流から生まれたコラボレーション。ひな菊とダリア、2人の少女の幼い頃の交流の思い出を描いた吉本ばななの小説と、そのイメージを絵にした奈良美智の挿絵。
(よしもとばなな)1964年東京都生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。『キッチン』 で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。『不倫と南米』 ドゥマゴ文学賞を受賞。いつの間にか 『吉本ばなな』 から 『よしもとばなな』 に改名。
奈良美智の挿絵を見て即買いした本です。
吉本ばななは 『キッチン』 以来、久しぶり過ぎるほど久しぶりに読みました。キッチンの頃は海燕って雑誌があったなぁ、時々買っていたなぁとか別のことを思い出しました。あと 『吉本』 さんいつの間にか 『よしもと』 さんになってたんだ、いつからか気付かなかったなぁ、とか思いました。
この本はあとがきでも作者吉本氏が触れているように、奈良美智氏の挿絵が大きく作用しているお話です。吉本氏は
『奈良くんの絵に押し上げられるようにして書いた』 と言うようなことを書いてますが、なるほどそう作家に言わせる奈良美智氏、スゴイです。そう思っていてもなかなかそんなことは作家という人種は言わないものだと思っていたので、またまた別の意味で驚きました。
評価:




(5つ満点)
肝心の内容ですが、ただ単に子ども時代のノスタルジーを追いかけている内容なのかと思えば、そうではありません。ひな菊は25歳の今を生きている、でも今を生きていられるのは、世界のどこかにダリアという名の幼い頃の友達が生きていて、自分のことを今も時々案じてくれているからだと信じているのです。
この頃見る夢がどうもおかしい。ダリアが助けを求めているような気がする。そんな思いを抱えながら、ひな菊は毎日を過ごすのですが、最後にダリアの訃報を聞き、ショックを受けるというよりああやっぱり、と思う。
普段私が読まない雰囲気の小説なので、やや戸惑いもありましたが、ここまで淡々と書けるのがよしもとばななの魅力なのかな。あまりにも淡々としすぎているような気もしますが、ひな菊の悲しみやダリアの想いは、いくら言葉を並べても言い尽くせないものなのだとしたら、これでいいのかもしれません。
そしてそれは代わりに、奈良美智氏の描く挿絵が語っているのかもしれない。
挿絵だけでもお得な文庫本、奈良美智が好きな方にオススメです。
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