事業に行き詰まった父親が自殺、通夜が終わった早朝、阪神大震災が襲ってきた。水原雅也は大災害に紛れ、借金返済を迫っていた叔父を手にかけてしまうが、その現場を見知らぬ女に目撃されてしまう。その女と運命共同体となる道を選んだ雅也は、東京で次々と事業を成功させていく彼女を陰から支える存在として生き続けるが…。
(東野圭吾)1958年大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業。『放課後』 で江戸川乱歩賞、『秘密』 で日本推理作家協会賞、『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。著書に 『幻夜』 『白夜行』 『片思い』 『トキオ』 『ゲームの名は誘拐』 など。
『白夜行』 の続編としても著名な本書。ずいぶん前に読んだので内容をほとんど忘れており、そのおかげでラスト近くまで続編ということを意識せず読めたのは良かったです。これから読んでも十分楽しめますが、やはり最後の大仕掛けのところで 『やっぱり続編?』 といろいろ思い起こすのも面白いかも。ちなみに作者東野氏は
『幻夜』 が
『白夜行』 の続編である、とは明言していないそうです、多分言わないほうが面白いから。さすが話題作りも忘れない、ですね。
それにしても美冬の異常とまで言える上昇志向はどこから来るのか、『成功』 のために数々のワナを仕組み、実行する美冬の頭脳と行動力には驚嘆しますね…よくもそこまで恐ろしいことを考えつくものだ。ということはすなわち、作者である東野氏の人間観察力が素晴らしいということになり、これまた驚嘆です。
美冬がパートナーに選んだ雅也が腕のいい金属加工職人である、というところも大きなポイントで、彼にしかできない仕事が多くその結果美冬は数々の成功を収めるわけです。ただ白夜行の時と違い、雅也は徐々に美冬に対して疑いを持つようになるのですが、最後の一言でやはり彼は自分を騙し続けていた美冬自身を既に受け入れてしまっていることが読者に伝わります。
それでいいのか?と思うけれど、愛の形は様々なので雅也にとっては良かったのかもしれません。ただエキセントリックさでは白夜行の勝ちですね。
評価:




(5つ満点)
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