バブル絶頂期の東京。地価も株価も上がり続ける。元ディスコ黒服の堤彰洋は不動産屋の地上げを手伝うことで人を騙し陥れ大金を動かすことに陶酔を感じていた。やがて深みにはまってゆく。地上げの帝王 波潟とその座を狙う若手不動産屋 斉藤、波潟の愛人 麻美、世間知らずの波潟の娘 早紀など、全ての人間がバブル期の好景気という熱病に取り付かれ奔走し、崩壊する様を描く。第130回直木賞候補作。
本作が直木賞候補となった際 『馳星周の新境地』 『ノワールからの離脱』 などと散々書かれていたのでちょっと何かが違うのか、と期待していたのですが、いつもの馳星周節は健在でした。題材もノワールに入るんじゃないの十分?と言ったところ。
私は馳星周は割と読んでいますが、一番好きな作品はやはり 『不夜城』。スーパーバイオレンス作品(笑)ではありますが、健一の心情が非常に繊細に描かれていた点で気に入りました。本作はその不夜城に近い部分もあります。
私は馳星周の短い文章が好きです。簡潔な表現が暴力的で過激な世界を盛り立てていると思います。ノワールを好んで読まない私ですが馳星周だけは読むのは、彼の文章力に惹かれているからかもしれません。
評価:




(5つ満点)
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