戦前、英国人一家の別荘だった洋館。今では荒れ放題だが近所の子ども達にとっては絶好の遊び場となっている。その庭に辛すぎる思い出がある少女 照美は、13歳という思春期を迎え、長年そこから遠ざかっていたが、あることがきっかけで洋館へ入り、その洋館に存在するという秘密の 『裏庭』 への入り口に立つことになる。裏庭とは何か、そしてその裏庭へ入った照美が見た世界とは。孤独を抱える少女が 『裏庭』 という異世界で見たもの、自らの力で勝ち取ったものとは、何だったのか。第1回児童文学ファンタジー大賞受賞作。
(梨木香歩)1959年生まれ。児童文学者のボーエンに師事。 『西の魔女が死んだ』 で日本児童文学者協会新人賞、『裏庭』 で児童文学ファンタジー大賞を受賞。主な作品に 『エンジェルエンジェルエンジェル』 『沼地のある森を抜けて』 『村田エフェンディ滞土録』 『春になったら苺を摘みに』 絵本に『ペンキや』 『マジョモリ』 『ワニ』 『蟹塚縁起』 など。
実はなかなか進まなかった本書。なぜだろう?と考えてみると、異世界である
『裏庭』 での出来事があまりにもファンタジックでついていけないような気がしたから。理解できないのは当たり前、異世界の話なのだから。分からない部分はそういうものだと受け止めて読み進もう、と決心したら読了することができた。読み終わって、それは主人公の照美ことテルミィ(異世界での呼び名)も同じだったのかもしれない、と思った作品でした。
本作は児童文学の形を取っており、児童文学賞受賞作として世間にもそのように受け止められているが、ハッキリ言ってかなり難解であると思う。設定も難しく
『旅する人の心により変化する裏庭』 という世界観をつかむことがなかなか難しい。
評価:



(私の裏庭はどこに…)
誰もが心の中にひっそりとした庭を持っている。庭を育てるのはその庭を管理する庭師であり、庭師が手をかけた庭は花が咲き誇り見事に調和しているが、誰も手をかけない庭は荒れ放題になってしまう。果たして心の中に存在する異世界も同様である、という話。
照美は 『裏庭』 への入口を見つけ、自身の 『裏庭』 へ入りそこを旅することとなる。多くの例えが出てくる、これもまた難解。
1) 裏庭を旅する際に必要な洋服を貸してくれるという 『貸服屋』 (買うのではなく 『借りる』 )
2) 自らも傷を負いながらも他人の傷を先に癒すことを喜びとする、おかしな人々の暮らす街
3) 果てしなく恐ろしい、死者達の街
どこでもテルミィは怯え、不安に感じながらも進んでいく。そう、 『進む』 このことがまず、必要なことなのだ。
梨木氏の著書はどれも深い内容で、私は一読ではなかなか理解できていないと感じるが、これはその中でも際立って難解だと思った。時間が経ってからまた読み直したい本の一冊となりました。
PR