街外れの廃屋のようなビルに住む変わり者のアルゼンチンババア。母をなくしたみつこは父がアルゼンチンババアと付き合っているという噂を耳にして故郷へ戻る。アルゼンチンビルを尋ねたみつこが出会ったのは、アルゼンチンババアとその愛情に包まれた父の姿だった。悲しみを乗り越えようとする人々と、悲しみを癒そうとする人々とのつながりを描く。挿絵:奈良美智。
(よしもとばなな)1964年東京都生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。『キッチン』 で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。『不倫と南米』 ドゥマゴ文学賞を受賞。いつの間にか 『吉本ばなな』 から 『よしもとばなな』 に改名。
小説というより詩か歌のような物語で、あっという間に読み終えてしまいました。最近よしもとばななを読んで得た印象は、登場人物の感情をあまり押し付ける書き方をしないということ。むしろサラッと書きすぎかもしれない。それから 『ま、いっか』 という展開も多い。こういう雰囲気が好きな人がよしもとばななファンなんだろうな、と思いました。
映画公開があったので読んでみたのですが、本を読み終わったら映画公開も終わってしまっていたという…遅いわ 。原作があんまりアッサリしているので映画はどういう出来なのかちょっと心配ですが、そちらはそちらで上手に脚色しているのでしょう。
挿絵はおなじみ奈良美智ですが、奈良美智の描く世界とよしもとばななの書く世界は、やはり似ている感じがします。どちらも我が道を行く、というスタイルですが実は周囲に細やかに気を遣っている、かのような。
やはり小説というより詩のような、物語です。
評価:(5つ満点)