昭和17年の南方への命懸けの渡航、束の間の逢瀬、張りつく嫌疑、修羅の夜。戦争に翻弄された作家 林芙美子の秘められた愛を渾身の筆で炙り出し描き尽くす長篇小説。島清恋愛文学賞受賞。 『週刊新潮』 連載に加筆・修正して単行本化。
(桐野夏生)1951年金沢市生まれ。成蹊大学卒業。『顔に降りかかる雨』 で江戸川乱歩賞、『OUT』 で日本推理作家協会賞、『柔らかな頬』 で直木賞、『グロテスク』 で泉鏡花文学賞、『残虐記』 で柴田錬三郎賞、『魂萌え!』 で婦人公論文芸賞、『東京島』 で谷崎潤一郎賞、『女神記』 で紫式部文学賞、本作で島清恋愛文学賞を受賞。 また 『OUT』 で日本人初のエドガー賞候補となる。
『IN』 で何となく失敗したテーマを本作でリベンジ、でしょうか?林芙美子は著者 桐野氏の投影なのでしょう。難しい時代を背景にこれまた難しい人を題材に、描かれた作品。自分の意志のみを尊重し貫いた林芙美子が主人公でありながら、妙に愛しさを感じてしまうのは桐野氏の視点がそうだからなのでしょう。
軍属となった当時の文筆家らの苦悩についてもよく分かります。
評価:




(5つ満点)
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