同じ保育園に子どもを預ける3人の若い母親。クスリに手を出す作家のユカ。乳児を虐待する涼子。夫に心を残しながら恋人の子を妊娠するモデルの五月。現代の母親が抱える母であることの幸福と孤独を描き出す。『新潮』 連載を単行本化。
(金原ひとみ)1983年東京都生まれ。文化学院高等課程中退。児童文学研究家、翻訳家の金原瑞人を父にもつ。『蛇にピアス』 ですばる文学賞、芥川賞を受賞。主な著書に 『アッシュベイビー』 『オートフィクション』 『AMEBIC』 など。
久々の金原ひとみ。主人公の1人、ユカは著者の投影ですが自らを
『悪趣味小説を書く作家』 と揶揄するところなどは潔いです。主人公がユカと涼子だけだとあまりにもステレオタイプな2人でつまらないのでそこに五月を入れたのか?と最初思ったのですが。前半はとにかくつまらないので何度か読むのをやめようかとも思ったのですが、後半ぐぐっと面白くなってくるので皆さんも頑張ってみてください。ラストは衝撃です。
ユカと五月と涼子。社会的立場も収入も夫も夫婦関係も三者三様、皆それぞれ全く違うけれど、同じなのは孤独だということ。金原の小説のテーマはほとんどすべて
『人はみな独り』 です。その一言を読者に伝えるために、ここまでの小説を書く。うーんやっぱり純文学はこうでなくっちゃ。
ユカも五月も涼子も、結婚して出産して何かを手に入れたはずなのにそうではなく、何かを失ってしまったような気持ちに日々苛まされている。そしてラスト、3人はそれぞれまた1つずつ失うが、代わりに得るものもあるのだ。シュールさが売りだと思っていた金原ひとみがこんな希望のあるラストを書くようになったなんて、ちょっと感動しますね。
評価:




(5つ満点)
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