ある夏の日隣家の少年 『ミミズ』 が母親を撲殺する。女子高生 『トシ』 とその友人達はそれぞれ携帯電話を通じて事件に関わり、ある者は傍観、ある者は逃走を幇助するなどの展開に。逃げ続ける 『ミミズ』 そして彼に関わる4人の女子高生の心の内を描いた衝撃作。
この本はちょっと前に読みましたが、折しも大阪の十代のカップルがそれぞれの家族を殺害した上で心中する計画を立てていた、という事件を聞いて思い出しました。彼らにとっての
『現実』 が常識では計れない、とどの報道も伝えていました。
殺害を犯す男子高生 『ミミズ』 はじめ4人の女子高生はそれぞれの世界観 【リアルワールド】 を持つわけですが、果たして現実の社会でそれが自由(=権利)かどうか?というのが本作のテーマです。『ミミズ』 は自分の世界に沿わない母親を撲殺してしまった。しかしそれは彼にとっては 【正義】 であり、逃走幇助をする女子高生にとってもミミズの行為は 【正当】 であり、彼女自身の信念に従って幇助をするのです。
唯一常識に近いと思われる 『トシ』 でさえもミミズの行動や友人達が幇助していることを知りながら、傍観するのみです。そこに人との関わり方について独自の判断で行い、それが正しい事と疑わない現代人の恐ろしさを感じます。
とはいえ私もどうでしょう。私にとっての 【現実=リアルワールド】 は、他人から見るととんでもない物かも。何が常識で何が非常識か、もはや司法でも裁けない時代に来ているのかもしれません。
読了感は結構キツイです。
評価:



(5つ満点)
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