中学2年の隼太に新しい父 優ちゃんができた。優ちゃんと一緒の夜は恐くないはずだったのに。キレて自分を殴る優ちゃんを隼太は失いたくない。虐待を受ける側の隼太の視点に立った、克服までの日々を描く。
(瀬尾まいこ)1974年大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒業。『卵の緒』 で坊っちゃん文学賞大賞を受賞しデビュー、『幸福な食卓』 で吉川英治文学新人賞、『戸村飯店青春100連発』 で坪田譲治文学賞を受賞。著書に 『図書館の神様』 『優しい音楽』 『強運の持ち主』 など。
DV、しかも母の再婚相手からというシチュエーションは状況としてはかなり深刻なはずなのに、この希望を見出そうとする、底知れぬ力はどこから来るのだろう。暴力を振るう義父 優ちゃんが中学生の隼太に庇われている、すなわち保護されている、この難しい状況を描ききった瀬尾まいこの、現役教師という立場、子どもを見守る目のの確かさを再確認しました。
今回は完全にブレのない視点で良かったです。父子でもない兄弟でもない、でも他人でもない実に不安定でありながら互いを求めてやまない義理の父子、という難しい題材を、ここまで爽やかに描ききった筆力に、やはり脱帽ですね。瀬尾まいこは見逃せません。
評価:




(5つ満点)
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