そしてこっこの友達がはたまたそれぞれ複雑な環境揃い。おじいさんがボートピープルだったベトナム人のゴックん。お父さんは大学教授だけど学生さんと恋愛しちゃってお母さんと離婚寸前の、在日四世の朴くん。吃音に悩みながらも誰よりもこっこを理解し心の助けとなってくれる親友のぽっさん。などなど。みんなすごい状況を抱えながらもやっぱり小3だから、すべてが自然体。そのまんま生きてます。特にすごいのはぽっさん。人間できてます。こっこが変質者に会った時に自分がいなかったことを悔やみ、ぽっさんが言うひとことがっ。
『すまんかった、ひとりにして。』 こんなセリフを小3の子が言う、しかもぽっさんだから実にしっくり馴染んでしまう!この西加奈子の、力量。
ここで西が言いたいのはもちろん破天荒な小3こっこの愛らしさだけではなく、こっこを全ての大人と子どもに置き換えても、つまり貴方や私に置き換えても成り立つ、この愛すべき人間社会の有り様ではないでしょうか。こっこのような粗暴(笑)な子にも、彼女を心から愛し慈しむ家族がいること、にも関わらずこっこはひたすらに孤独を追い求めること、そしてふとあるとき自分の考えの違いに違和感を感じること。
これって、今を生きる全ての人に当てはまることですね。
20歳が大人、と言っても今の20歳はおろか、30歳、ヘタすると40歳でもまだまだ精神的に子どもの人は実に大勢おります(私もかっ)。周りの奴らはみんなアホや。誰も私のことを分かってくれへん。でもこっこはクラスの仲間にそれぞれ事情があることを知り、その事情も自分と何かが違うから 『かっこええ』 と思い、マネしてみるけどみんなはそれを嫌がったりして。でもぽっさんは、自分の吃音をこっこが真似してもこっこは本当にぽっさんをかっこええと思うてやってることを、きちんと理解している。そう、こっこにはちゃんと理解者がいて、いつもそばにいてくれて、そして危機の時にいなかったことを 『すまんかった』 と言ってくれる、人がいる!
そして何よりもいいのは、そのことにこっこはまだ、気付いていない!なんてったって小3だから。
『きりこについて』 のきりことこっこは非常によく似てますね。こういう話は何度読んでもやっぱりいいです、西加奈子。純文学の王道、素晴らしいです。西加奈子の文章は好みが分かれるかもしれませんが、私はとても好きです。
きりこについて*西加奈子 2009/09/11