東京で学生生活を送る笙(しょう)の元に突然やってきた父。その存在すら知らなかった伯母松子が東京で変死を遂げたとだけ告げ、彼女の住いの後片付けを笙に頼み父は帰郷した。恋人と2人そのアパートを訪れ見た彼女の残した生活の痕跡から、伯母松子の生涯を辿ることを決意した笙。30年前松子24歳。才色兼備と評判であった彼女が教職を追われ故郷から失踪した夏。その時から始まった松子の流転の人生を、笙と松子の一人称を切り替えながら辿ってゆく。最後まで愛を求めて奔走した1人の悲しい女性の生涯を描く。
私にこの本を貸してくれた友人も、既に読み終えていた別の友人も、
『松子にイライラさせられっぱなし』 とメールで言ってましたのでどんなイライラする女が出てくるのやら、とビクビクしながら開いてみました。何のことはない。私のことが書いてあるのかと思いました(笑、って笑えない)。
松子の人生はまさに転落の日々。人間ここまで落ち切ってしまえるのか、と思うほどの運のなさというか、男運のなさというか。でもそんなダメ男ばかりを捕まえているのは松子自身なんですね。さまざまな書評に
『最後まで幸せを追い求めた1人の女の物語』 のように書いてありますが、確かに松子側から見ればそうかもしれませんが、幸せというのは1人で築けるものではないのではないでしょうか。
評価:




(5つ満点)
松子は最初からあまりにも自己中心的で、独善的で、誤りに陥ってもいつまでも気がつかない、という三重苦を抱えています。すぐパニックになるところもそう。本当に私みたいだ…。
私も1つが気になると周りが見えなくなるタイプなので、非常に危険です。松子は風俗嬢としても働くのですが、お店が終わった後も昔の風俗では 『勉強会』 なるものを開き熱心にお客様のために研究を続けていた、なんてくだりを読んでいると、私ももし風俗嬢になったらこういう風に熱心にやるんじゃないかなぁ、なんてしょうもないことを考えてしまいました。
松子は決して周囲の人々に嫌われ続けていたわけではありません。不遇の死を遂げたけれども、それを甥の笙が辿り直すことにより、松子自身の生き様が見えてきます。松子は松子なりに精一杯生きていた。でもこの題名をわざわざ付けた著者。上手いな、の一言です。題名だけなら満点。
PR