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推理小説*秦建日子

suirishosetu.jpg全く面識のない人々が相次いで惨殺される事件が起こる。事件をつなぐのは現場に残された 『アンフェアなのは、誰か』 と書かれた本の栞のみ。警察と主要出版社に 『推理小説 上巻』 という原稿が届く。そこに書かれていたのは事件の詳細と殺人の予告だった。犯人の意図は何か、犯人に翻弄される警察内部とマスコミの目を通じ、犯人の真の目的に迫る。刑事 雪平夏見の物語、フジテレビドラマ 『アンフェア』 原作。 
(秦建日子)はた たけひこ。1968年生まれ。早稲田大学卒業。小説家、劇作家、演出家、脚本家。金融会社勤務を経て専業の作家活動に入る。代表作にTVドラマ 『救命病棟24時』  『HERO』 『ドラゴン桜』 など。 

この小説はちょっと風変わりである。著者は著名なTVプロデューサー、脚本家であることから、本作を書いた意図が読み取れるのではないだろうか。

小説はフィクションである。ノンフィクション、ドキュメンタリーではない。
だからこそ楽しむこと、その世界に入り込むことができるのであって、本作のように小説にあわせて事件を起こす、又は事件を起こしてその事実に基づいて小説を仕上げる、という犯人の行動は、現実社会において考えると本末転倒であり、小説の成り立ち方として有り得ない話である。ハッキリ言えば全く意味のない小説である。しかしこの犯人にとってはそれが 『リアル』 であり、この 『オリジナル』 であることが大切であると言っている。だから犯人は続けて事件を起こすのだ。

評価:(5つ満点)

しかしこの一連の事件、小説の成り立ちを 『外』 から眺めてみるとどうだろう。
小説にリアリティが必要、と犯人は言うが、そもそもリアリティの感じ方、捉え方は人それぞれである。ある人がリアルだと感じることであってもある人にとっては虚構と感じることもあるのだ。

つまり犯人にとってのリアルが他人にとってもリアルであるとは限らない。
この事実に気付いていなかった犯人はやはり、愚かであるとしか言いようがない。

また真のリアリティをこの小説に求めるならば、刑事 雪平夏見の存在がまずリアルではない(笑)。
散らかしすぎて片付けられない女は確かに存在するが、多くがその事実について悩んでいるがどうしようもない、という状態である。だが雪平は全くこの事実に悩んではいない!このことがまずリアルじゃないと私は思うけど…。
ごくわずかな少数派として雪平のようなタイプもいるのかもしれないが、雪平の存在自体がまず 『アンフェア』 だと思う(笑)。

あとがきにある書評に、著者は本作でTVドラマでは表現できないことを小説にした、とあるが、私は違うと思う。むしろこの小説は非常にTVドラマ的であると感じた。
 目をそらさなかった。
 目をそらさなかった。
 目をそらさなかった。
なんて記述は必要がない。同じ言葉を3行も続けたらまるでマンガのようだ。

本作は一般のフィクション、小説として読むと、私にとってはリアリティがなく、雪平をはじめとする登場人物のキャラクター設定を突飛にしただけの、あまり手ごたえがないものに感じた。登場人物同士の関わり方もイマイチで、事件の解決が雪平ただ1人の勘に拠るものが大きいのも納得いかない。
ただ、小説という手法でリアリティを追求するばかり、現実に事件(殺人)を犯すことは実に愚行である、というメッセージ性を伝えることが目的のものだととらえてみると、いい本なのかもしれない。 

なんて、辛口で書いてしまいました。これはやっぱり小説というよりドラマですね、ドラマがヒットした訳がよく分かります。

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