世界は無数の前夜に満ちている。ノーマ・ジーンがマリリン・モンローに変わるその前夜。期待と恐怖と孤独がひとつの予感に溶けあったその前夜。記憶や日常についての文章と、言葉や本についての文章をまとめた鬼才 穂村弘のエッセイ集。
(穂村弘)1962年北海道札幌市生まれ。上智大学英文学科卒業。歌人、翻訳家、エッセイスト。『短歌の友人』 で伊藤整文学賞、『楽しい一日』 で短歌研究賞を受賞。主な著書に 『シンジケート』 『短歌という爆弾』 『もうおうちへかえりましょう』 『本当はちがうんだ日記』 など。
トンデモ歌人(笑)ホムラさん。その不器用なホムラさんが女性誌(FRAU)で読者向けにコラムを書いてたなんて…。いやホムラさんの不器用ぶりももしかして演出なのか?
『本の雑誌』 初出のコラムはホムラさんのオタクぶり100%で面白い。それによれば 『驚異、を表現できるから歌人』 だというホムラさんは語る、短い一句に言葉をいかにこめるかが歌人なのだ。そこで 『思いがけない』 言葉同士の組合せが名句を作る、なるほど。言葉のミスマッチがすなわち歌になるのだと言う、コレはいいポイントだ。
『共感と驚異』 の章は必読。こういう文章を高校の現国で読ませればいいのに。読者とは 『小説に共感を求め、詩歌に驚異を求めている』 のだそうだ、なるほど!詩歌に求められているのは、ワンダーなのだ!驚異を求める感覚が最も増大するのは思春期である、だからホムラさんはいつまでも少年の心(※のようにやたら恥ずかしがりで自意識過剰)なんだ!それは歌人 寺山修司もだ!
…としばしまた本書で盛り上がってしまいました。時々詩歌が読みたくなる私の感覚はまだ若い(思春期に近い)ってことなんですね、うんうん。
本書でも紹介されている私の好きな大村陽子氏の一句。ホムラさんと感覚が似ていることが嬉しいやら悲しい(!)やら(笑)。
枕木の数ほどの日を生きてきて愛する人に出会はぬ不思議 大村陽子
さらにいくつ枕木を超えればいいのだらう。ということで本書もオタクのアナタは必読です。
評価:(5つ満点)