1000年後の日本。機械文明は消滅、新種の生物が闊歩する世界。人類は 『呪力』 と呼ばれる念動力を操り小さな共同体を作って生活していた。豊かな自然に囲まれた中、日本古来の伝統を重んじ生きる人々。しかしそれは厳重に管理された世界であったのだ。町と外界を隔てる八丁標、繰り返し説かれる悪鬼と業魔の存在、そして呪力に目覚めない子どもはネコダマシに消されるという噂。世界の本当の姿がどこにあるのだろうか。早季は学校の仲間とのキャンプで禁じられた区域に入り、そこで 『ミノシロモドキ』 に出会う。ミノシロモドキが語る世界の真実の姿とは。それは人類の血塗られた歴史であったのだ。一人の少女の成長を通じて人類全体への警鐘を突き付ける、著者構想30年の超大作。
(貴志祐介)1959年大阪府生まれ。京都大学経済学部卒業。岸祐介名義で『新世界より』の原点となる短編「凍った嘴」でハヤカワSFコンテスト佳作。『十三番目の人格-ISOLA』で日本ホラー小説大賞長編賞佳作、『黒い家』 で日本ホラー小説大賞、『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞長編賞を受賞。主な著書に 『青の炎』 『狐火の家』。
久々に☆5、必読書。破綻なく1000年後の未来を描き切っており秀逸。呪力と呼ばれる念動波の能力を
『全ての』 人類が持つ時代という設定も、そうした超常の能力を
『全ての』 人が有するが故に生じる様々な問題も、見事に描ききっている。
『教育』 と
『知識』 これが今後の世界で最も重要視されるだろうという意見に賛成だ。そして同時にこれらはもろ刃の剣であるという展開にも。人間の奴隷であるバケネズミの存在、バケネズミと人間の関係、人類のコミュニティのあり様、そしてコミュニティに
『教育』 されている子ども達が、新しい
『知識』 に出会う展開…素晴らしい。これぞSF小説、かなり満足です。
タイトルにある
『新世界より』 ドヴォルザークの
『家路』 これもまた物語全体を盛り立てている。現在のコミュニティまでの成り立ちまでの背景を知り、未曾有の危機を脱しコミュニティの責任者となった早季ですら、コミュニティを守るためまた同じ道を辿ろうとしているラストが、身に沁みる。人類が進むべき
【正しい道】はどこにあるのだろうか。
評価:





(大絶賛!!!)
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