25歳の亮介はファッションデザイナーを目指しながら実家の農業を手伝うかたわら、親方の元でツリーハウス作りに精を出す毎日。だが人気者の兄 慎平の帰郷で穏やかな均衡が崩れはじめる。すばる文学賞受賞。
(木村友祐)1970年青森県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。本作ですばる文学賞を受賞しデビュー。
主人公 亮介が
『生かされてる』 でもなく
『自立して生きている』 でもなくただ自分は
『生きてる』 ということに気付く物語。というのは人類の歴史上数限りなく紡がれていますが、やはり物語として今もなお綴られる、綴られて古く感じないのは、それが自明でありながら自覚することが最も難しい、人生のテーマの一つだからでしょう。
と最初から何言ってんだ調で始まりましたが(笑)、久々に純文学です。多くの書評に南部弁の会話が活きているとあった通り、南部弁で地方の閉塞感を見事に表現しています。海、山、川に囲まれた自然豊かな八戸の地を背景にしているところが、しっかりした情景を描き出しています。文章が巧いです。
この正統派純文学がどう作者 木村氏流に化けていくのか、三崎亜記、金原ひとみ、中島たいこといった作家陣を生み出してきたすばる文学賞だけに楽しみです。うまく化けるのかそれともこのままフツーの純文学として消えてしまうのか。正直読了後は純文学的なイライラ感(笑)は足りないというかさほど感じませんでした、もっとイライラ感があっても良かったのに。
評価:



(5つ満点)
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