1989年、ある市民病院に外科医 当麻鉄彦が赴任する。見栄と体裁を気にかけ簡単な外科手術ひとつまともに行われないその腐敗した病院で、次々と困難なオペを成功させる当麻。彼の 『目の前の患者を救いたい』 という信念はやがて病院を、そして人々を動かしていく。そんな中、病に倒れた市長が市民病院へ搬送されてくる。彼を助ける方法は唯一、脳死状態の少年から肝臓移植を受けること。しかし、それは日本の法律ではいまだ認められていない禁断のオペだった。当麻の決断は。
堤真一はじめ夏川、余、平田、柄本といったキャスト陣がみんなしっくりくる配役というところがまず素晴らしいですね。キャストらがそれぞれのカラーを意識した見事なチームワーク。夏川、余の両氏の存在感が厚いので、ややエキセントリックな役柄の堤さんが浮かないです。テレ朝らしく生瀬、吉沢というブラッディマンデー(ドラマ)メンバーも勢揃いですけど。生瀬さんは悪役もなかなかいいのですが、もう少し凄みが欲しかったですねぇ。どうしても矢部警部(トリック)のイメージが強すぎて笑ってしまう…。
ストーリーは急死した母の日記を元に回想していく、という構成がまた見事。時代は89年、平成元年。病院のたたずまいや人々のファッションはまだまだ昭和。かといってテーマは昭和は良かったというノスタルジーではなく、時代を経ても人の想いや信念というものは何も変わらないのではないか、変わらないだろうというのが大きなテーマ。手術シーンも割愛せず表現しています、うごめく内臓(!)の様子とか、今の映画の技術は本当にスゴイ!の一言です。
脳死間移植の是非を問う、という映画ではないと各メディアの宣伝にあったとおり、押しつけがましさは特に感じません。脳死移植法制定前という時代設定も効いていると思います。ただひたすらに、余さんの演技に泣かされます。それも余さんだからあざとさを感じさせない、実に上質の日本映画です。
評価:




(5つ満点)
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