みのりは31歳独身。映画のシナリオライターをしている。元彼氏が結婚すると知ったその日から原因不明の震えにしばしば教われるようになり、救急車まで呼んでしまった。医者を何軒かハシゴした挙句、辿りついた漢方診療所。そこでは 『色々なところが弱いというあなただけの病気』 と診断される。自分の病気は何が原因なのか?迷いながらも漢方に身を託したみのりと、多少の違いはあれそれぞれストレスを抱え生きる友人達との交流を描く。第28回すばる文学賞受賞作。
(中島たい子)1969年東京都生まれ。多摩美術大学卒業。『チキチキバンバン』 で日本テレビシナリオ登竜門の大賞を受賞。『宇宙のペン』 で城戸賞準入選をはたし、以後映画製作等に携わる。主な著書に 『そろそろくる』 『建てて、いい?』 など。
新しい作家だけど久しぶりにすごく読みやすかった本でした。装丁もいいし。何でかな?と考えてみると、まず
『テーマが明確』 それから
『人物設定が明確』 。これはやっぱり映画の基本手法を学び、実際にその現場で活躍している作者だからできた小説なのか?などと思いました。
主人公みのり自身も周囲の友人達もみなそれぞれ病んでいるが、それぞれの日々を一生懸命こなしつつ生きている、というところに非常に好感が持てましたね。軽くもなく重くもない文章、不思議な感覚の小説で等身大な感じがしました。その後、何かの書評で、中島たい子氏の書く小説は主として30代女性をターゲットとしており読者層が限られそうな危険があるが、それが逆に小説の方向性をしっかりと位置付けているためブレがない出来になっている、とかなんとかあってほほおなるほどなぁ。と30代の私は思ったのでありました。
さらにこの本に感化され早速中医学(漢方治療)の病院をタウンページで探した私…やっぱり相当な単細胞ですな。そしてH市には中医学の病院、やっぱりないのでありました。
評価:




(5つ満点)
PR