暴力団組長の子供ばかりを狙った猟奇殺人が発生。警察庁の上層部は内部犯行説を疑い極秘に犯人を葬ろうとする。警察庁の女性キャリアが選んだ【狩人】はかつて未成年の殺人犯を射殺して警察を追われた元刑事の西野。組長の子供を殺したのは中国人の仕業だとする暴力団と中国人マフィアとの全面戦争が始まる中、警察庁キャリア同士の攻防、犯人隠匿の理由に西野が迫る。
やっぱり大沢在昌は面白い。
読んでいる途中からやめられなくなってしまう。大沢節健在です。
真犯人の描き方が物足りない、という書評を多く見ましたが、私はあれでいいのではないかと思います。むしろ犯人像よりも事件に関わる多くの登場人物の描き方がさすが大沢氏。それぞれが魅力ある人物として綿密な設定で描かれています。元刑事の西野、警察庁キャリアの時岡(大沢作品の例外にもれずやたら美人の設定)、新宿の暴力団組員の原、新宿署マル暴担当刑事の佐江、それぞれの関係はそれぞれの立場や利害を考える前に 『人』 としてお互いを尊重し協力する 『絆』 とも言えるような関係となってきます。普通ならばそんなことはないでしょ、と言いたくなるような関係も大沢氏の手にかかれば現代のファンタジーとでも言いましょうか、何となくそれもアリかなという気分になります。そうそれが大沢節なのかも。
評価:




(5つ満点)
アンダーワールドを描きながらも退廃感を感じさせずむしろ人生や人に対する愛情を感じさせる作品、それが大沢作品。本物のハードボイルドですね。もちろんこれは好みが分かれるところではないでしょうか、世の中そんなキレイごとだけじゃないよ、という意見も多いのかもしれませんが、大沢作品は私の好みです。
以前大沢氏の講演に行ったことをBlogにも載せておりますが、その時の質疑応答で大沢氏は 『僕は新宿は怖い所だからあまり行かないし、新宿のことも資料で調べて書いているだけ』 とおっしゃっていましたが、それはやっぱりウソだと思います。絶対何らかの情報網があるに違いないっそしてその情報屋にナニガシかを包みそっと渡す大沢氏…ってそれこそ小説の読みすぎでは(笑)。
それにしても大沢氏の作品に出てくる主要な女性は 『息を呑むほどの美貌』 ばかり、どうしてでしょ。以前友人が私が貸した宮本輝の本を何冊か読んで 『どうしてすごい美人ばかりなのかね』 と言っていましたが大沢氏も同じく美人ばかり。男性作家のサガでしょうか?
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