優雅だがどこかうらぶれた男。一見大人しそうな若い女。アパートの押入れから漂う罪の異臭。父娘はどこから来てどこへ向かうのか。時系列を逆に遡り父娘の壮絶な親子の愛情を描いた作品。第138回直木賞受賞作。
(桜庭一樹)1971年島根県生まれ。小説家、ライトノベル作家。フリーライターとして活動後コンピュータゲームシナリオ、ゲームノベライズ等を手がける。 『赤朽葉家の伝説』 で日本推理作家協会賞受賞、本作で第138回直木賞受賞。主な著書に 『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』 『赤×ピンク』 『青年のための読書クラブ』 など。
久々に直木賞受賞が納得の作品だが、この作品は大衆文学というよりむしろ純文学ではないのだろうか?などと思ってしまう。この頃ますます大衆文学(直木賞)と純文学(芥川賞)の区別が付きません。
現代から過去へ遡るという構成がまず面白い。娘である花と義父である淳悟の関係が徐々に変わっていく様を、なぜ時の流れと逆に描いたのだろうか?血は本当に水よりも濃いのか?家族とは何なのだろう。ただ頑なまでに排他的な花と淳悟の親子関係は、やはり血のなせる技なのだろうか?
正直展開が途中から見えてしまうところがマイナスだが、時系列を現在から過去へと逆にしているところが新鮮でプラス1。高校生から小学生の頃の花の視点が見事に描かれているところが素晴らしい。花と結婚する美郎が、なぜあの?花と結婚しようと思ったのがよく分からないけど…。美郎自身もつまらない男だし。ここに登場させることで淳悟と正反対の男を描きたかったのかな?
評価:(5つ満点)