空中ブランコができないサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコンに悩むプロ野球選手。困り果てた末に訪ねた神経科で出会ったのはトンデモ精神科医、伊良部だった。『イン・ザ・プール』 から2年、あのトンデモ精神科医が帰ってきた。今度の患者はどんな被害に?第131回直木賞受賞。
(奥田英朗)1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライター、構成作家を経て作家に。『邪魔』 で大藪春彦賞、本作で第131回直木賞を受賞。主な著書に 『ガール』 『サウスバウンド』 など。
(収録作品)空中ブランコ/ハリネズミ/義父のヅラ/ホットコーナー/女流作家
現在3冊出版されているDr.伊良部シリーズでも本作が一番の秀作。直木賞としてもアタリです。伊良部のキャラクターが確立されており、パートナー?であるマユミちゃんの存在感も重厚。
今回もDr.伊良部は体当たりで患者の救済に当たります。でも体当たりなのか単に無鉄砲なのか、実際は不明だけど…。
『空中ブランコ』 では例に漏れず、空中ブランコができなくなったサーカス団員に代わり伊良部が空中ブランコに挑む!挑むか普通?それよりなぜサーカス側も伊良部に許可してしまうのか?そこが伊良部のキャラクターのスゴさなのかも…。
『義父のヅラ』 では学生時代の友人達と再会、伊良部の過去が明らかに?なんて別段過去という過去でもないですが…。
多くの心身症が紹介されてますが、尖端恐怖症やノーコンになる(キャッチボールができなくなる)症状があるのは知らなかった。普段は何気なくやっていることが急にできなくなったり、普段目にしているものが急に恐怖の対象になったりするのが心身症だそうです、なるほど。
それに本作の患者は全て、自分の仕事や生き方に自信を持っていたはずなのにある日突然それが崩れてしまった人が多いですね。その患者の性格なども見てみると興味深いです。
それにしてもこうした難しい症状の患者さんにも押しなべて、伊良部の治療(?)はかなりのショック療法。そしてそれが的を得ているようで…やっぱり名医なの?
評価:





(5つ満点)
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