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終の住処*磯崎憲一郎

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話しかけても応えない妻。不機嫌のせいだと思ったが妻はそれきり11年、口を利かなかった。30を過ぎて結婚した男女の遠く隔たったままの歳月。日常の細部に宿る不可思議をあくまでリアルに描きだす。過ぎ去った時間の侵しがたい磐石さ、その恵み。人生とは流れてゆく時間そのものだ。『新潮』 掲載に書き下ろし 『ペナント』 を加え単行本化。 第141回芥川賞受賞。
(磯崎憲一郎)1965年千葉県生まれ。早稲田大学卒業。『肝心の子供』 で文藝賞、本書で芥川賞受賞。主な著書に 『眼と太陽』 『世紀の発見』 。
(収録作品)終の住処/ペナント

友人が読了後 『つまらなかった…』 とメールをくれた本作。通常そういう場合はその本は読まないのですが逆にちょっと読んでみたくなりました。で、確かに分かりました、ある意味すごくつまらないです(笑)。なぜか。

穂村弘がいつも言っているように、人は 『小説に共感を、詩歌に脅威を』 求めています。最近の小説は、読者に共感を与えすぎ>読者の読みたいものしか書いていない、とも言えます。大衆文学(エンターテイメント)はもちろんこうあるべきですが、では純文学(芥川賞)はどうか。前回芥川賞が選なしになった際、審査員の池澤夏樹が 『小説は魂で書くものだ』 と言っていました。今、魂で書いている小説はどれだけあるのでしょう?

『終の住処』 男の一人語り。男は終始霧の中をふわふわ生きている感じ。妻とも会社の人とも取引先とも愛人らとも、誰とも距離を掴めない。唯一母とその住む実家だけが心の拠り所という…典型的なダメ男、だから共感できない。でもなぜか一気に読んでしまった。それはこの男の持つ心もとなさ、足元の覚束なさ、誰かを頼りたいのに頼れない自分の存在感のなさ、そうしたものすべてにやっぱり共感できる部分があるからなのだろう。

本当にどうしようもない男で愛人も全部で8、9人もいたそうで、妻は11年間口を利いてくれなかったそうだがそれに対して打破しようという気も行動も起こさず、ただひたすら進んできた男が見つけた唯一のものが、終の住処となるマイホームだった。心の拠り所のない男が見つけようとした拠り所が、家。

俗と言えば俗なのに、この全体に漂う空気感。やっぱりこれこそが純文学なのではないでしょうか。綿矢りさと金原ひとみがW受賞した時も私の周りの人はみんな綿矢派で金原派は私だけでした…でも今も私は金原の小説は時々読んでます。自分の好みという理由も大きいですが、 『文学ってなに、魂ってなに。』 などと考えたりもできる純文学を、たまに読むのもオススメです。

評価:(5つ満点)

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1972/02/16
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