刑期を終え出所したらすべてをやり直せると思っていた。ところが襲ってきたのは決して拭い去ることのできない、前科者という肩書、法的拘束。自己嫌悪や世間の悪意という数々の苦悩に苦しめられてきた著者が絶望の淵から立ち上がり、ライフワークと言える刑務所改革、福祉問題に真っ向から取り組む姿を克明に描く。
(山本譲司)1962年北海道生まれ。早稲田大学教育学部卒。菅直人代議士の公設秘書、都議会議員を経て国政の場へ。衆議院議員二期目の2000年、政策秘書給与流用事件を起こし、実刑判決を受けた。 著書に433日に及ぶ獄中の生活を記した 『獄窓記』、続編として 『累犯障害者 獄の中の不条理』 がある。
前2作が犯罪者となってしまった障害者の様子を伝えているのに対し、本作は山本氏自身の心情をより詳細に綴った作品。出所後どうしようもない劣等感に苛まれる日々、それはどうしてもぬぐいさることのできない大きな心の傷だった。家族へのコンプレックス、『世間』 へのコンプレックス、『社会全体』 へのコンプレックス。その中で同じ境遇の作家、阿部譲二氏との出会いや獄窓記出版に至るまでのポプラ社の人々との出会い、元議員仲間や出会った多くの人々に支えられ、山本氏が生きる道を模索し続けるところがよく描かれていて素晴らしい。
成長しよう、したいと思い続けそれを実現し、さらにそれを著書という形で素直に公表する山本氏、人として素晴らしいという思う。改めて出所した方々の抱えるコンプレックスについて、この本で少し理解できたと思う。
評価:




(5つ満点)
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