財閥会長の運転手、梶田が事故死した。遺された娘の相談に乗るよう会長である義父に頼まれた三郎は、事故の真相を突き止めようとする妹とそれを好ましく思わない姉の、それぞれ相反する思いにとまどいを感じながらも、梶田の人生をたどり直すが…。
どんな人も自分の人生を生きるうちにある 『誰か』 に気もちを割いて生きている。それが幸せであることもあるし、不幸せであることもある。
またしても宮部みゆきの大ドンデンは秀逸である。父親の過去を探るはずが、実は姉妹の複雑な関係を露わにすることになってしまい…というストーリー。
主人公三郎の描写がいい。本当なら辛いだろうはずの彼の人生、立場を、三郎は自分の愛する 『誰か』 である妻と娘のために受け入れている。だから義父である会長はこの一件を三郎に依頼したのだろう。
古い建物である本社ビル別館の佇まいや、1階に入居している喫茶店、その他の描写はすんなりと心に入ってきて、落ち着いて読むことができた。やっぱり宮部はこういう現代刑事モノが一番だなぁー。
アナタにも、アナタの人生に大きな存在を占める 『誰か』 がいるのでは。そのアナタにオススメしたい一冊です。
(余談)カッパノベルスにしては装丁が可愛くて、私好み。それだけでも見てね。
評価:





(5つ満点)
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