泉水と春は2歳違いの兄弟。『英語にするとどちらもスプリング』 2人は最強の兄弟だと自負するほど仲がいい。病床にある父も 『俺達は最強の家族だ』 と言う。仙台市内で連続放火事件が起こり、その現場近辺には放火前に必ず謎のグラフィティアートが先に描かれていた。それらに必ず法則性があると主張する春に促され、泉水はいやいやながらも放火犯を捕まえようと協力するが…。家族、親子、兄弟の絆について描いた家族小説。
(伊坂幸太郎)1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年 『オーデュボンの祈り』 で第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。『アヒルと鴨のコインロッカー』 で吉川英治文学新人賞、『死神の精度』 で日本推理作家協会賞短編部門を受賞。著書に 『ラッシュライフ』 『チルドレン』 『魔王』 など。
『春が二階から落ちてきた。』 の一行で始まり、同文で終わるこの小説。
ややスタイリッシュ感を意識しすぎな感も持てなくはないが、それよりも気になるのは各章が短すぎること。適度に普通に長い章立ての小説に慣れている身にとっては、またしても章の題名を示す一行が入るだけで、思考を中断されているかのような感を覚え、ややイライラします。
伊坂幸太郎は初めて読んだので、それがいつもの彼の手法なのかこの小説に限りなのか分からないけど、章の題名も半分ほどは 『?』 という物があって、なかなか読みにくかった…。
しかし人物設定についてはなかなか良く出来ていますね。泉水と春の兄弟、美人で破天荒だった母(早世)、病床にありながら最後まで病魔と闘う気力を忘れない父。泉水が遺伝子を扱う企業に勤めていることも大きくこの物語の核となっています、というかそうでなければ成り立たない話。
つまりは家族という関係には遺伝子が必要不可欠なものなのか?つまり、血の繋がりとは何か?というのが一番のテーマです。
あとは遺伝子情報についての豆知識がたくさん得られます。それも謎解きが好きな人には面白いかも。ただちょっとその辺の仕掛けは甘いかな。でも最大のテーマは上に挙げた
『家族』 であることを考えれば、まぁいいでしょう。
弟 春のストイックな生き方、非暴力非服従の精神を貫いたガンジーに傾倒する様は、ややくどいかな。でもくどいからこそ春は自分のアイデンティティーにここまでこだわったとも言えるし、それは必要な記述なのかもしれないですね。と読後思いました。
ただ
『重力ピエロ』 という題はちょっと弱いかな。もうちょっと違う題が適当な気がします。
評価:



(ちょっと辛口)
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