忍者ブログ

DaisyAKM Archives

読書と映画と観劇と

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

雪と珊瑚と*梨木香歩

yukisango.jpg珊瑚21歳、シングルマザー。生まれたばかりの雪を抱え、明日生きていくのに必要なお金もない追い詰められた状況で、ある女性と出会い温かい言葉とスープに生きる力を見出す。やがて珊瑚は食を提供する店を経営することを計画する。珊瑚と雪と、周囲の温かい人々との触れ合いと成長を描く。
(梨木香歩)1959年鹿児島県生まれ。児童文学者のボーエンに師事。 『西の魔女が死んだ』 で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞、『裏庭』 で児童文学ファンタジー大賞、『沼地のある森を抜けて』でセンス・オブ・ジェンダー賞大賞、紫式部文学賞、『渡りの足跡』で読売文学賞随筆・紀行部門を受賞。主な著書に『からくりからくさ』 『エンジェルエンジェルエンジェル』 『村田エフェンディ滞土録』 『春になったら苺を摘みに』 、絵本に 『ペンキや』 『マジョモリ』 『ワニ』 『蟹塚縁起』 など。


珊瑚、シングルマザー21歳。0歳児の雪を抱え仕事なし、夫なし、親なし、家なし。と言うとさも悲愴な状況ではあるのですが、あまりそう感じさせないのはやはり梨木香歩はファンタジー作家だからでしょうか。梨木作品に限っては現実味とかそういうことはあんまり考えないのです、考えなくてもいいのです。既に世界観ができあがっているからです。そんな梨木香歩が、好きなんです。

本作の主人公の珊瑚はこれまでの主人公達とちょっと違っていて、何となく結婚しちゃって何となく夫は出て行っちゃって、自分はとても困った状況にあるんだけど、どうしようかな。という雰囲気の少女なのです。そう、おかあさんだというのにまだまだ中味は少女なんです。そこでこの珊瑚に対しどんな想いを抱くか。普通の本なら人物描写がイマイチだとか言いそうな私ですが、梨木作品だとそれもアリかと思ってしまう。この梨木マジック、スゴイです。

ということで全面的に珊瑚と雪の味方で物語は進んで行きます。珊瑚は運良く、本当に運良く、素晴らしいベビーシッターに出会い、彼女から料理を教わりそれをカフェにすることを思いつき、一緒にやりたいと言ってくれた大学生の女の子をアルバイトに雇い、無農薬野菜を作っている農家に出会い、そして森の中の素晴らしい一軒家を見つける!とまぁ良いこと尽くしでこれまた他の作品なら 『………』 とか私は言いそうですが、それも梨木さんの世界ならOKなのです。何度も言いますが、梨木香歩は私には特別なのです。

それで終わってもよいのに、本作では珍しく社会の毒のようなものが出てきます。読了後もなぜこの毒を描いたのだろうか、必要ないのではないかとまで思ったのですが、敢えてこの物語に毒を盛り込んだ梨木さん。それが現実ということかもしれません。でも私は私達の生きる社会に毒は必要ないと思うのと同様、梨木作品には毒はいらないと、思うのです。

愛らしい雪と、珊瑚に。そして周囲の美しい人々に。現代のファンタジー作品として楽しんでください。

評価:(ファンタジーを愛するあなたに)
PR

Comment

しまった!

  • 小琴
  • 2012-09-18 08:26
  • edit
おはようございます。

以前に菜摘ちゃんからお知らせいただいて

即!予約して
 ようやく手元に届き

読み始めていたのですが

 .....


珊瑚が 農家さんとかけあって云々~

というあたりで
返却期限。

図書館から
“ご予約待ちの方がおられますので”のお達し。

これまた即!返却してまいりましたが...。

【毒】発生に至る前に 本を閉じていたのですね。


続きを読まねば.....。

 
それにしても
相変わらずの読書量。

自身を省みて ため息です。





ぜひぜひ

  • 菜摘
  • 2012-09-18 22:18
  • edit
ぜひとも小琴さんにはこの毒の部分を読んで感想をいただきたいです、
また再予約よろしくお願いします。
読了直後はなんでこんな毒をわざわざ盛り込んだ…と思っていたのですが、
今こうして時間がたって思い起こしてみれば、こうした毒すらも凌駕する何かを
持っているのが珊瑚、そして雪だということかもしれませんね。

世界が美しく見えるか否かは、その人自身にかかっている。
という梨木香歩の世界観は、健在です。

ようやく

  • 小琴
  • 2012-10-21 22:20
  • edit
読み終えました。


菜摘さんおっしゃるところの
【社会の毒】が気になって、ポイントをあてて読みすすんでいましたが...。

実は こちらを読む直前に(図書館予約の順が先にまわってきたので)
【僕は、そして僕たちはどう生きるか】を読了していて

素直な感想を言いますと

多岐にわたるテーマの方向性に ちょっと
 ハテナマーク???が飛び交っていたのです。

その後に 【雪と~】を読んだわけでして、
梨木さんは
いったいどちらへ向かっていきたいのか。

大好きな作家なので どこまでも付いてゆきたいですが。


 といったところの読後感想です。

僕は、そして僕たちは

  • 菜摘
  • 2012-10-22 22:04
  • edit
小琴さんコメントありがとうございます。
毒、いかがでしたか?やっぱりちょっと 『えっ』 って思われましたよね。
何というか、ちょっと唐突というか。

『僕は、そして僕たちは』 読了されたのですね。私もちょっと気になってました。
教育問題、のエッセイですよね?(違っていたらすみません)
確かに、梨木さんのエッセイは若干(でもなく)偏りがあります。そこが
魅力と言えば魅力なのですが。
私も 『春になったら苺』 はすごく好きですが、その後続けて読んだ
エッセイのうち何か(失念)が途中で読めなくなってやめた覚えがあります。

ご自身の意見をしっかりと持ち、発言できる梨木さんは素晴らしいと
思います。そのすべてに共感できなくても、いいのではないかとも
思います。『春になったら苺』 でも言っていたとおり、
【理解できないが、受け入れる】
がこれなのかなぁ、と思ったりもしました。なかなかできることじゃない
ですが。
梨木さん、感覚が日本的じゃないですよね。理解できないが、受け入れるって
日本的じゃないです、やっぱり。

『僕は、そして僕たちは』 も読んでみます。ついて行けないかも(苦笑)。

この場をお借りして

  • 小琴
  • 2013-02-01 12:20
  • edit
恒川さん 出されたのですね。

そろそろかと先日も図書館(室)で探してはみたのですが...。

早速予約します。

恒川光太郎新刊

  • 菜摘
  • 2013-02-02 17:08
  • edit
そうです、出てました。恒川光太郎『私はフーイー』
沖縄の怪談話をアレンジした小説で、今回も
雰囲気たっぷりです。またまたよく分からない
ところも多々あるんですけど、それもまあいっか。
と思わせるのがやっぱり、作者の力量ですねぇ。

ぜひご覧くださいね。
お名前
タイトル
文字色
コメント
パスワード
カウンター
ツイッター始めました
今週の私
急にアクセス数が増えていて、自分でもビビリ…(笑)。10/10でブログ開設10周年!日付が追いつくよう頑張ります。
只今読破中
木皿泉 『昨夜のカレー、明日のパン』
プロフィール
名前:
DaisyAKM/菜摘
年齢:
53歳
誕生日:
1972/02/16
職業:
兼業主婦
趣味:
読書 映画鑑賞 観劇
かぎ針編み プール
ハマッてます:
車が新しくなりついにiPodがつなげる環境に!すごいぞ技術の進歩!
ブログ内検索
最新コメント
[10/14 菜摘]
[10/12 さつき]
[05/08 菜摘]
[05/08 小琴]
[03/19 菜摘]
アクセス解析

Copyright © DaisyAKM Archives : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]