小学生の頃、土手にいた魔女を見た結仁は魔女になることを決め、幼なじみの葵と史人と一緒に魔法使いクラブを結成する。3人の願いが叶うまでは決してクラブを辞めてはいけない。成長するにつれて友達とも家族とも関係をうまく築けなくなっていく結仁はどこへ向かうのか。少女の成長と葛藤をを小学生、中学生、高校生の三章で描いた書き下ろし。
(青山七恵)1983年埼玉県生まれ。筑波大学卒業。『窓の灯』 で文藝賞、『ひとり日和』 で芥川賞、『かけら』 で川端康成文学賞を受賞。
『ひとり日和』 より遙かに秀作でした、成長し続ける作家は素晴らしい!むしろこちらにあげたい芥川賞。
『魔法使いになりたい』 と学校の七夕の短冊に書いたために皆にいじめられるようになる結仁(ゆに)。仲の良かった皆藤さんの豹変ぶり、いつまでも変わらぬ友情を築いてくれる葵と史人。
この小説の怖いところは1章(小学生)2章(中学生)そして3章(高校生)で終わっているところです。結仁は高校生でもう既に周囲からの自立を求められてしまっているから。親にも兄弟にも頼れない結仁の置かれた環境を思うと胸が痛みます。
子どもは一体何歳まで、その 『子ども時代』 を生きることができるのだろうか?親としては自分の子どもにはいつまでも幸せな子ども時代を過ごさせたい、という、現実には絶対不可能な願いがあったりします。
そして衝撃のラスト、魔法は 『本当にあった』 のです。
このラストの秀逸さに久々に嬉しいショックを受けました。純文学作家 青山七恵、次作が楽しみです。
『ひとり日和』 が何となくイマイチだったなーという方も、ぜひご一読ください。
評価:(5つ満点)