中国・始皇帝の伝説の黄龍の力を受け継ぐ棗希郎右衛門。富と女性を惹きつける超常の力を持つ主人公が自分自身を探す物語。
これはちょっとおでかけの際に文庫があると便利だな、と気軽に借りた本ですが、思わぬヒットでした。元々大沢在昌のファンタジーを好む私にはピッタリの作品。設定もさながら、ラスベガスのギャンブルについて妙に詳しく説明してるな、と思っていたのですが、あとがきを見て納得。元々週間少年ジャンプの小説企画として書かれた作品で、中高生の読者向けに書かれた本。それで内容もちょっとソフトなのかも、と納得。
もちろん物足りない部分もあるにはあるのですが、テンポの良さはさすが。13歳からイタリアの修道院に預けられたいた主人公が、父の死によりその 『能力』 と名前を襲名し、自己の出自や能力を見極めて行く上でそれを人々に活かそうとする、主人公の心の動きが初々しく、爽やかな読後感です。
元々私は大沢氏の作品ではファンタジーに注目しております。もっともっとファンタジーを書いてほしいなあ。映画化された 『天使の牙』 もファンタジーに分類されると思うので近いうちに読もうと思っています。
私のオススメ大沢ファンタジーは
『暗黒旅人』
自殺を決意した恋人達が樹海で出会った謎の老人。二人の名声と引き換えに老人は二人に『使命』を授ける。運命に導かれ主人公と元恋人が与えられた『使命』で運命にひしがれた人々を解き放つ。
『悪夢狩り』
人間を生物兵器にする恐ろしい薬が新種ドラッグとして出回る。それを回収すべく国から依頼を受けたプロの元軍人の活躍を描く。
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『暗黒旅人』 のあとがきに
『悪夢狩り』 もぜひ、とあったので買いましたがこれはちょっとイマイチ。ただおもしろかったのは文中で
『携帯電話持ってるの?カッコイイ~』 という台詞があったこと。携帯電話がカッコよかった時代…時代の変遷をつくづく感じます。
評価:




(5つ満点)
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