中国人を狙った惨殺事件が相次いで都内で発生する。手がかりは被害者のバラバラ死体のわきの下に残された 『五岳聖山』 の刺青だけ。捜査は混迷し新宿署の刑事 佐江は、捜査補助員として毛と名乗る謎の中国人とコンビを組まされる。公安の思惑が働く中、外務省のエリート職員 由紀も加わり3人は事件の真相に迫ろうとする。やがて中国人連続殺人事件を中国政府による反政府主義者の処刑と考えた公安は、事件の解決よりも中国国家安全部の情報を得ることを最優先とし佐江たちを翻弄し、事件は日中黒社会をも巻き込んだ大抗争へと発展してゆく。日刊ゲンダイ連載を単行本化。
(大沢在昌)1956年名古屋市生まれ。慶応義塾大学法学部中退。『感傷の街角』 で小説推理新人賞を受賞しデビュー。『深夜曲馬団』 で日本冒険小説協会最優秀短編賞、 『新宿鮫』 で日本推理作家協会賞長篇賞、吉川英治文学新人賞、「新宿鮫 無間人形」で第110回直木賞、 『心では重すぎる』 で日本冒険小説協会大賞、『パンドラ・アイランド』 で柴田錬三郎賞を受賞。
『砂の狩人』 から数年。あの時ただ一人生き残った新宿組対の刑事、佐江に勅命が下る。
腹は出てるし熟年離婚されるし、全く冴えない風貌の佐江が今回のヒーロー。
今回のヒーローも決してカッコよくはないが、信念を持ちそれを決して曲げることなくそれに基づき行動する。情報を揃えた上で他人に惑わされることなく、自らの判断で行動しその行動に責任を持つヒーロー。その行動には通りすぎなほど筋が通っている!
今回のヒーロー佐江はヒロイン(っていうかマドンナ?)といい仲にはなりませんが、トリック、裏切り、それぞれの思惑と真意の交錯が見事な構成で、今回も大変満足でした。
評価:(5つ満点)