女手一つで娘を育ててきた姉 吟子と、大阪で芸人に憧れながら破天荒な暮らしを送る弟 鉄郎との再会と別れを描く家族ドラマ。長らく消息不明だった鉄郎が吟子の娘 小春の結婚式に突然現れ泥酔して披露宴を台無しにしてしまう。戦後に生まれ育った姉弟のきずなをバブル景気直前に生まれた娘を通して、現在と今後の日本の家族の姿を映す。10年ぶりの現代劇となる山田洋次監督が市川崑監督の 『おとうと』 に捧げたオマージュ。
この映画の最大の見どころは 『べてるの家』 であり、そこで人生の最期を迎える人の半生を振り返ってみるとこうかな?ということでできた作品です。中年姉弟の姉弟愛だと思って観ていると一体どうなの?何かブレてない?という感覚がぬぐえませんが、ラスト舞台がべてるの家になってからようやく映画の趣旨が見えてきました。
全体としてはよい映画ですが、吉永さん主演の映画をまともに見るのはこれで2本目で、それでようやく違和感の理由が分かってきました。彼女はやはり、女優というよりスター
なのです。どこにいても何に出演しても彼女は 『吉永小百合』 。だから、吟子という役柄になりきれていない、どころか最初っからそういうことは誰も求めていないわけです。この際どの映画に出ても役名は 『小百合』 にしてはどうか、とまで思うのですがいかがでしょうか(ウソ)。
若手の加瀬亮、蒼井優が今回もとても良かったです。誰の視点でこの作品を鑑賞するか、でだいぶ印象が変わってくる作品ですが、配役のことはさておき山田洋次監督の直球な作品作りはやっぱりいいですね。ただ、しつこいけど吉永さん鶴瓶さんではない配役だったらもっとどうだったろう、と思ってしまいました。
ちょっとキレイすぎる関係の描き方で、この姉弟にはもっとずっとドロドロの罵り合いとかして欲しかったですね。
評価:(5つ満点)