一コマ一コマに余白を感じた作品。素晴らしかった。女性の監督らしく細やかなカメラワーク、そして見事な脚本だった。監督・脚本の西川美和氏、今後も外せない要チェックの映画監督となるでしょう。
東京でカメラマンとして華やかな生活を送る弟 猛と、故郷 山梨で家業のガソリンスタンドを継ぎ黙々と働く兄 稔。母を亡くし父と兄の2人暮らしで兄は仕事の他にも家事一切を1人で担っている。
そんな対比から兄弟の関係が描かれてゆくが、自由奔放な弟と質素で穏やかそのものだった兄の関係が、ストーリーが進むにつれて徐々に崩れていく様が凄い。
穏やかな性格だったはずの兄の豹変ぶり、激高して弟につばを吐きかける兄を演じた香川照之、さすがとしか言いようがない。役者として完全に出来上がっている。
甘えん坊で後先を考えない弟、売れっ子カメラマン時代の華やかさとその後の仕事をほされた様子、両方を見事に演じたオダギリジョーも良かった。ほされた様子をくどくど表現せず電話をする様子だけで表現する。こうした余白、観る側に考えさせる間の作り方がとても上手い。日々の暮らし、何気ない一言、そうしたものだけで表現し訴え続けた脚本とカメラワーク、心に沁みました。
誰しも心に闇を抱えて生きていること、そしてその闇に飲み込まれてしまいそうになることを正面から捉えた作品です。ラストは必見、兄 稔の表情が見事。
評価:(必見!)
ようやっと
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