1943年、久蔵は戦争で四肢を失い顔面が焼けただれた無残な姿で帰国した。人々から奇異の目で見られながらも、多くの勲章を手にし 『生ける軍神』 として崇められる久蔵に 『軍神の妻』 として尽くすシゲ子。やがて終戦の色が濃くなり始めた時、久蔵とシゲ子それぞれの行方は。ベルリン国際映画祭最優秀女優賞受賞(寺島しのぶ)。若松孝二監督作品。
キャタピラー:芋虫。生々しい映画でした。若松監督の作品はいずれもインパクト強大すぎます。
『実録 連合赤軍』 を観たときも思いましたが、人は平和な環境ではまともに判断できるはずのことが、そうではない環境に置かれるといとも簡単に狂ってしまうのだという事実。真正面から捉えた作品です。
観終わった直後、シゲ子が狂気に走らなかったことがやや不満に感じたのですが、しばらく経ってみるとむしろあの極限にあって正気を保ってたシゲ子こそが、恐ろしいのかもしれません。
戦争のバカバカしさの象徴として何度も婦人達の竹ヤリ訓練とバケツリレー訓練のシーンが出てきます。えんつこに入れられた軍神 久蔵、その滑稽さと哀しさがつのってきます。
戦争が終わり、それまでの正気が狂気に、そして狂気が正気に戻った描写が見事です。バケツリレーも竹ヤリ訓練も、そして軍神様もみんな狂気だったのだ。赤い着物の男が戦時中はキチガイのフリをしていたのだという描写には、レビューを観るまで気付きませんでした…。
評価:



(R15ですね)
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