高校時代に親友のキズキを自殺で喪ったワタナベは新しい生活を求めて東京の大学へ進学する。東京でワタナベはキズキの恋人であった直子に偶然再会し2人は頻繁に会うようになる。しかし心を病んだ直子は京都の療養所へ入院することに。その頃ワタナベは大学で快活な女子大生 緑と出会う。70年代の学生運動盛んな大学を舞台に描く。松山ケンイチ、菊地凛子主演。トラン・アン・ユン監督作品。
面白かった?と聞かれるたびに 『面白いかと聞かれたらつまらない映画』 などと答えてしまいました、すみません。
そうですね、流れとしては面白くはないです。ただひたすらワタナベは直子を緑の間で揺れ動く、ただのノンポリ学生に過ぎません。でもそれこそが村上春樹の世界観なのでは。日本語で演じていますが雰囲気は完全にフランス映画です。
ワタナベ。学生運動まっただ中の大学に属していても徹底してノンポリを貫く。友達付き合いをしているのはブルジョア(死語)の先輩。先輩も先輩で散々恋人を振り回し、その恋人は卒業後親の決めた婚約者と結婚した挙げ句、自殺したそうだ。ワタナベは直子にご執心なのは確かだが、それが真の愛情なのかキズキへの想いを投影し続けているのか。しょっちゅうワタナベにちょっかいを出す緑も、失った家族という埋められない孤独をワタナベで埋めようとしているのか、それとも違うのか。
ひたすらに全編に漂う退廃的な感覚が、見事に表現されています。愛とは虚しいだけのものなのか?主義主張(学生運動)とは虚しいだけのものなのか?その答えは自分で出すしかないのでしょう。
純愛ってか、退廃。それが70年代。
(おまけ)友達との会話で私が 『ブルジョワだね~って今言わないか』 と言ったら友達は 『それって今はセレブってことだね』 そうか、セレブ=ブルジョワだったのか!よく分かりました。(やはり私は70年代生まれ)
評価:(松ケンの表情は本当に素晴らしい)