高い評価を得ている原作に忠実に沿った内容なのでした。映画という映像表現ならではの現在と過去の場面切り替えが巧みなシーンが多く、素晴らしいと感じました。
昭和33年(原作では30年)の広島のセット、背景はCGであることが分かりますがそれでもなお見事ですね。バラック街の様子もよく出来てます。昭和30年代の洋品店、設計事務所の様子、会社の雰囲気など考証がきちんとできているので、見ていて違和感がなく安心していられます。
第一部の 『夕凪の街』 では原作にはない皆実と恋人 打越と、弟 旭との交流が多く描かれているのが、第二部の 『桜の国』 にも繋がっており、物語の軸としているところがいいですね。
田中麗奈は今回も良かったです、彼女の持つ存在感はやはりスクリーン向き、強すぎる個性が私は好きです。彼女に比べると東子役の中越典子はどうしてもどのドラマでも同じ感じに見えてしまってやや残念。もう少し東子の儚い部分や芯の強い部分が出なかったものか…ということを色々考えてみてもやはり映画は女優ですね。
評価:(5つ満点)
『夕凪の街』 で皆実が原爆投下後の広島を思い出すシーン、覚悟を決めておりましたが、その部分は複数の画家による絵画で表現されていました。ホッとすると共に絵だけでもこんなに恐ろしいのだからこの部分がカラー写真だったりしたらどうなるのか…またしても平和な時代にのうのうと生きている自分を感じてしまいました。
皆実の 『生きとって良かったのじゃろうか』 といつまでもいつまでも自分自身に問い続ける姿が、最後まで胸を打ちます。
映画ならではのエピソードで印象的だったのは、七波と東子がご休憩(!)に入ったホテルのバスルームで、2人で大声でプリンセスプリンセスの 『ダイヤモンド』 を熱唱するシーン。2人の離れていた空白を埋めるシーン、そして2人の生きてきた戦後という平和な時代を象徴するシーンとして印象的でした。
原作の素晴らしさだけに頼らなかった、素晴らしい映画でした。
無題
原作は