アンは17歳で夫に出会いそのまま妊娠・出産したためそれが当たり前の生活になっていた。夫は子ども達を愛しアンを愛しいつかは普通の家に住もうと話してくれる。アンは夫や子ども達にとっては 『居て当たり前』 の存在となっていたのです。アンの恋愛は家族や自己の否定ではなく、むしろそれを肯定するための行動だったのではないかと思うのです。
アンは居て当たり前から自分が他人に影響を与える存在となりたかった、自己実現がしたかったのではないでしょうか。それは(一応)若いうちに結婚した私にも思い当たる部分があります。気がつけば自分は妻として母として要求されるばかり、それはもちろん幸せなことなのだけれどもそれを切り離した自分とは一体何なのだろう。それをアンは知りたかったのでは。
アンは子ども達の誕生日用にテープにメッセージを吹き込みますが、最後に夫と恋人に向けてもテープを作成します。死ぬことを知っていながら恋に落ちた恋人にとってはある意味残酷な仕打ちだったのかもしれません。けれども彼はアンのメッセージで再生を誓うのです。アンにより変化を与えられた。それだけでアンの恋の目的は達せられたのではないでしょうか。原題の 『My Life without me』 が効いています。
決して出来過ぎなストーリーではなく、自分の周囲を見回せば人生はいかようにも生きられるという話です。
能動的に生きましょう。