会社を逃げ出した女、丁寧な日本語を話す美しい外国人、冴えないバーテンダー。非日常な離島のリゾートホテルで出会った3人を動かす圧倒的な日常の奇跡を描く。『パピルス』 掲載に加筆修正し単行本化。
(西加奈子)1977年テヘラン生まれ大阪育ち。関西大学法学部卒業。『通天閣』 で織田作之助賞受賞。主な著書に 『あおい』 『さくら』 『きいろいゾウ』 『きりこについて』 など。
川上未映子で純文学にハマッた私、積読していたこちらもすぐ読み始めました。 『きりこについて』 も良かったですがこちらの方が私にはしっくり来るかも。というか現代に生きるほとんどの人が、主人公ゆりのような思いで生きているのではないでしょうか。だから香山リカ 『しがみつかない生き方』 が売れるんだなきっと。
ゆりはずっと疎んでいたひきこもりの姉を最後にはうつくしい人だと再認識しますが、ゆり自身もおかしな外国人マティアスも、酒の名前を覚えられない役立たずのバーテンダー坂崎もまた 『うつくしい人』 なのだということなのでしょう。。西加奈子のこの溢れんばかりの愛情は、どこから来るのでしょう!ゆりにイライラさせられつつもゆりを愛おしく思ってしまう、そしてそれは自分自身を愛おしく思うことなのだと、気づかせてくれるのはなぜなんだろう。 『人は物語を通じてその生き方を見つける』 と言っていたのは村上春樹だったか。純文学にどっぷりハマりつつある、秋の読書です。
評価:(5つ満点)