結婚していようがいまいが誰でも最後はひとり。『ひとりで暮らす』 『ひとりで逝く』 ため、シングルが老後を元気に楽しむためのノウハウ本。住まいやお金への対策から介護の受け方、最期の時を迎える準備などを社会学の第一人者である著者が一刀両断。
(上野千鶴子)1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。平安女学院短期大学助教授等を経て東京大学大学院教授。専門は女性学、ジェンダー研究。主な著書に 『老いる準備』 『スカートの下の劇場』 など。
フェミニズムの第一人者として名高い東大大学院教授である上野千鶴子氏。その氏が書き下ろしで書く、全ての女性(と男性)に向けた、老後の過ごし方のハウツー本。とくれば読むしかないでしょう。
上野千鶴子氏と言えば私には、遥洋子 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 でぐぐっと身近になった存在ですが、遥氏の著書では上野センセイ、ものすごーく怖いオバちゃん(すみません)という印象です。しかし男女の区別なく骨太な人が少なくなった今、上野先生のような方はとても貴重な上に尊敬に値する人物だと思います。
さてそんな上野氏が解く 【いかに老後を楽しむべきか】 。まずのっけから本の題名が 【おひとりさまの…】 というところでかなりのインパクトです。しかもシングルであろうがなかろうが、人はいずれおひとりさまになる、という動かしがたいが直視したくない事実を、読者は最初から目の前に突きつけられるのですからかなりキツイ内容かと思いきや、そこはさすが上野氏。読者を想定して難しく直視したくない内容を、分かりやすく丁寧に解説してくれています。さーすーが、社会学の第一人者!文章力だけで脱帽です。
もちろん内容も盛りだくさん、これは読んで損のない一冊です。インパクトありありの語録集となっています。
評価:(5つ満点)
喪失は同時に自立をもたらしてくれる
ガーン。と来ました。失うことは辛いことだが、失うことでそれにすがる気持ちを同時に切り捨て、人は自立することができる、と上野氏はハッキリと言い切ってくれました。そうか、喪失って悲しく辛いことだと思っていたけど、それをステップにして自立ができる、ということなんだ。
早速手帳にこの一文を書きました。来年の座右の銘です。
友人にはメンテナンスがいる
これも目からウロコでした。友達だから、と言って甘えてはいないか?大切な友人こそ日ごろから連絡を取り合い、大事にして行くべきだ、という上野氏の説に大賛成です。そうだ、数年ぶりにいきなり電話してきて 『…買ってくれない?』 とか言う人はやっぱり友達じゃない!(別にそういう人が身近にいるわけではありません、念のため。)
孤独は大切なパートナー
ひとりを楽しむことができなければ、おひとりさま生活はとても成り立たない。自分の趣味、信条、生きがいを持ちましょう。そうです、ひとりが好きでなければ結局大勢で集まっていても楽しくないのでは。友達と会うのが楽しいのは、ひとりひとりの個性とぶつかり合うことができるから。意味のない会話ほど嫌いなものはありません。これは私も全く同感で、この点についてはひとりが大好きな私は問題なし、ハードルクリアー(笑)。
メシがうまくなる相手と少人数で
この一文の前には 『セックスと美味しい食事とどちらを取るか?』 というちょっとショッキングな一文があるのですが(笑)。やはり食は人間の一番の基本であり楽しみでもあります。美味しいご飯を気の会う少人数の友人とだけ食べる、これが大切だそう。イヤな人と美味しいもの食べてもちっとも美味しくないものね。
人間は壊れもの
これもかるいショックを受けました。そうか、誰でも壊れものなんだ。傷つけば心が壊れてしまうこともある。だからお互いに思いやり、大切に思う心が必要だということ。
コレクティブハウス
(和製語 collective house) 共同居住型集合住宅。私生活の空間とは別に共用空間があり、生活の一部を居住者が協力して営む形態の集合住宅。(広辞苑第六版より)
前々から気になっていたコレクティブハウス。簡単に言うと個人のエリアは寝室、共通のエリアはリビングで、リビングを他の居住者(ファミリー)と共有する、という形態の住み方がコレクティブハウス。これがシニアの方々ばかりならグループホームというやつですな。でもケアが必要になる前から入居して住民同士コミュニケーションを取り、最終的にそこでケアをされ最期を迎えられたら、どんなにいいでしょう。気の合う友人達とこうしたところに入居できたらどんなにいいかしら…。
都会か田舎か
そしてその場所も大切、都会は確かに介護の種類も内容も行き届いている。しかし田舎は田舎で少し歩けば自然がいっぱい、食べ物も美味しい。どちらを終の棲家とするかは、貴女次第。ということだそうです。これは悩むなぁ、一応?都会出身の私は現在H市という田舎で暮らしていますが、どちらも捨てがたいものなぁ。
そして最後に、この本で得た一番大きな収穫はこの一文。
”あなたの居場所” とは 『ひとりっきりでいても淋しくない場所のこと』 である
(二村ヒトシ 『すべてはモテるためである』 2002)
居場所とは、ひとりでいても淋しくない場所のこと。これほど自分の居場所について、的確に表現した言葉はあるでしょうか。二村氏はホストをされていたそうです、そして上野氏はこの著書を読んでこの一文に感動し、この本が文庫版になった際にあとがきを書いたそうです。
居場所。ここ数年考え続けていた言葉ですが、この言葉がこの本に出てくるということは私だけではなく多くの人が考えることなんだ、と気付いたのも大きな収穫でした。老後の前に皆様、ぜひご一読を。