ヘルシンキ、ミュンヘン、メキシコ、沖縄。世界の片隅でひっそりと起こる出会いと別れを美しい8つの物語に結晶させた、12年ぶりの短篇集。
(池澤夏樹)1945年北海道帯広市生まれ。都立富士高校卒業、埼玉大学中退。詩人、翻訳家、小説家。翻訳はギリシア現代詩からアメリカ現代小説など幅広く手がけている。 『スティル・ライフ』 で中央公論新人賞、第98回芥川賞、『マシアス・ギリの失脚』 で谷崎潤一郎賞、 『花を運ぶ妹』 で毎日出版文化賞を受賞。主な著書に 『キップをなくして』 『静かな大地』 など。
(収録作品)都市生活/レギャンの花嫁/連夜/レシタションのはじまり /ヘルシンキ/人生の広場/20マイル四方で唯一のコーヒー豆/きみのためのバラ
池澤氏の書く 『短編小説らしい小説』 が私は好きですね。短い中にテーマが完結していて、スッキリとムダがない。これぞ小説。ですね。
『レシタションのはじまり』 は素晴らしかった。現代のおとぎ話ですが、現実感に溢れた流れになっています。ひょっとすると明日が、5年後に世界中の軍隊が解散する、その始まりの日になるかも…なんて。
『ヘルシンキ』 もひっそりと悲しい物語で好みですが、
『20マイル四方で唯一のコーヒー豆』 も良かったですね。これは17歳の少年が主人公ですが、池澤氏は還暦を過ぎてなお、こうして少年の視線を捉えるのが何て見事なのでしょうか。これぞ小説家ですね。
この三篇は必読です。
評価:




(5つ満点)
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