不良少年達にもてあそばれ死体となった娘。その復讐のために父は犯人の1人を殺害し逃亡する。世論は賛否が大きく分かれ、警察内部でも父親に対する同情論が密かに持ち上がる。犯罪被害者の遺族には犯人を裁く権利があるのだろうか。断罪について問う。
(東野圭吾)1958年大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業。『放課後』 で江戸川乱歩賞、『秘密』 で日本推理作家協会賞、『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。著書に 『幻夜』 『白夜行』 『片思い』 『トキオ』 『ゲームの名は誘拐』 など。
テーマとして重く、難しいです。娘を陵辱された長峰の取った行動は果たして
『正当』 と言えるのでしょうか、
『正当』 とは誰に、何に対して正当なのでしょうか?
少なくとも長峰本人にとっては正当な行動だったのだと思いますが、彼の行動がもたらす周囲へのあまりにも大きすぎる影響に大しても、とまどいと恐怖を覚えます。
また彼の復讐の対象となる犯人である少年、アツヤとカイジのそれぞれの救いがたい母親を見ていると、同じ親としてまたいたたまれない気持ちになります。
逃亡する長峰の心の支えとなった和佳子、彼女の存在は長峰にとっても読者にとっても大きいものです。この和佳子ついての記述がもうちょっと多くても良かったかも、和佳子の心理状態や長峰との交流などについて。
東野作品らしく今回も伏線はバッチリ張ってあります、でもあのラストは、薄々感じさせつつもありえないのでは…いやありえないことが起こるのが現実だろうか?などと思いました。
宮部みゆき
『名もなき毒』 でも思いましたが、これら社会に巣食う
『毒』 は浄化しようがないのでしょうか。毒があることが現代社会では、当たり前のことになってしまったのでしょうか。人ごとだと思っている 『毒』 は身近にあるものなのかもしれません。
評価:



(5つ満点)
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