昭和43年という時代設定、出てくる言葉も時代を感じさせて楽しいです。山のデパートの店員さんは 『おおきいこぞうさん』 丁稚か!こぞうさんって一体?更にカレーライスじゃなくて 『ライスカレー』 今こう言う人はほとんどいないかも。ちょっと前まではライスカレーって言う人も結構いたのに。
私の母は 『温泉を掘るつちぶた』 がおかしいと言ってました。私は着替えをして出かける黒ヒョウとその黄色い服が気に入ってました。読んでいくうちに色々思い出しました。そして一番おかしい部分は、3羽の鳥を囲んでジャングルの動物たちが 『バカ騒ぎ』 をしているシーン。
あの子はだれだ 名前を聞くな ヘイヘイホー
という謎の歌を歌いながら、鳥たちはダンスを踊りその周辺でうさぎやいたちという小動物たちが空き缶やヤシの実を叩いているシーン。
ちいぼうは踊る鳥が珍しく眺めていますが、一瞥したひとこぶらくだが一言。 『ふん、ばかさわぎか。』
この台詞が最高に効いている!今時の児童文学で登場人物に 『ふん、ばかさわぎか。』 と言わせてくれる作品は、もうないと言ってもいいのでは?
終始意味不明な動物たちと出会いながらちいぼうのジャングルでの旅は続き、ライオン館でライスカレーをごちそうになった後、ちいぼうが川原のワニのお腹の中で見つけたものは。
ちいぼうは終始ゆねさんの姿を求めてジャングルをひとこぶらくだに乗ってさまようのですが、川原でじっとして動かないワニに出会います。よく見るとワニのお腹にはジッパー(※チャックのこと)が付いている。
ちいぼうがじーっとジッパーを開けてみると、驚くことに中には更に小さいワニが入っていました。そのワニのお腹にもやはりジッパーがあり、ちいぼうが開けてみると中から みかん色(※オレンジではない)のタオルが。
ゆねさんのタオルがワニのお腹の中に!ゆねさん食べられちゃったのか?いやワニの中にはタオルだけ、じゃあゆねさんは?ちいぼうと共に読者も考えます。
『おーいゆねさーん、どこいっちゃったんだよおー!』
果たしてちいぼうはゆねさんに再び会えるのか?
5歳のちいぼうが突然現れたひとこぶらくだと旅を続ける。突然眼前に広がるジャングル、ジャングルにはヒョウやサルや温泉を掘るつちぶたや、踊る鳥にバカ騒ぎする動物たち、ライスカレーをごちそうしてくれるライオンなど変な動物たちがいっぱい。そして迎える大団円、ゆねさんはどこへ!?
ナンセンスはストーリーと共に長新太の挿画が素晴らしい、本当に思い出の作品です。
このナンセンスぶり、真似できません。岸田衿子はさすがです。そして晩年多くの作品を残した長新太にも、間違いなく大きな影響を与えたと思われます。
長新太のナンセンスの源流をここに発見したような気がします。
そして時代を超えて面白いものは面白い。2日に分けて第2王子に読み聞かせしてみたのですが、カラーが少なく更に挿画のないページもある本書を、彼はしっかり楽しんで聞くことができました。第2王子自身のおはなしを聴く力が上がっていることも確かではありますが、やはりこの本が魅力があるのだと痛感した次第です。
現在絶版。復刊ドットコムに復刊依頼を出さなくては。更に古書店でも探してみたいと思います。いつの日か、見つかることを祈ってます。